日本皮膚科学会雑誌
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eccrine poroepitheliomaの1例―特に電顕ならびに組織化学的所見について―
落合 豊子鈴木 啓之森岡 貞雄
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1986 年 96 巻 6 号 p. 585-

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抄録

60歳,男子の左手掌にみられたeccrine poroepitheliomaを電顕的,酵素組織化学および免疫組織化学的に検索した.電顕的には細胞質内管腔と微絨毛の形成,管腔周囲の澄明帯と発達したtonofibril,豊富な糸粒体とリボゾーム,multivesicular bodyの存在,わずかなデスモソームとよく発達した細胞質突起を認めた.これらはフォスフォリラーゼ活性,コハク酸脱水素酵素活性陽性等の酵素組織化学的所見やS-100蛋白陰性等の免疫組織化学的所見ともあわせて,本症が表皮内汗管由来の腫瘍であることを強く示唆する所見であると考えられた.また腫瘍細胞巣には光顕的に嚢腫状構造が認められた.これを電顕的に観察すると,腫瘍細胞全体が嚢腫状構造に向って管腔を形成していく分化過程を示しているものか,あるいは1つの変性過程であり,その結果,管腔様構造を形成したものか,2通りの可能性が考えられた.

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© 1986 日本皮膚科学会
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