日本皮膚科学会雑誌
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原著
粘液囊腫に対するトリアムシノロンアセトニド局注後にみられたムチン貪食反応
天羽 康之高須 博新井 達増澤 幹男勝岡 憲生
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ジャーナル 認証あり

2002 年 112 巻 7 号 p. 979-984

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抄録

下口唇粘膜粘液囊腫に対して行ったトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A®)局注後に,粘液産生腫瘍を思わせる特異な病理組織像を呈した症例を報告した.切除組織像は,粘膜固有層から粘膜下組織にかけて,細胞質に好塩基性の細顆粒を有し,中心に類円形の核をもつ細胞が大小多数の胞巣を形成して浸潤する所見を示していた.浸潤細胞に異型性や核分裂像は認められず,組織化学的に細胞内顆粒はムチカルミン,アルシアン青(pH 2.5)染色に陽性,トルイジン青に異染性を示し,免疫組織化学的にはCD68,lysozymeに陽性であった.さらに我々は拇指末節背面に生じた指趾粘液囊腫の切除術後に再発をみた症例に対してトリアムシノロンアセトニド局注を行い,その再切除組織にも前例と同様の浸潤細胞を確認した.これらの所見から自験例で認められた浸潤細胞はムコ多糖類を貪食した組織球であり,トリアムシノロンアセトニド局中により誘導された組織反応と考えた.

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© 2002 日本皮膚科学会
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