日本皮膚科学会雑誌
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家族性良性慢性天疱瘡における実験的水疱モデルの作製およびそれに対する各種薬剤の影響について
池田 志斈小川 秀興
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1990 年 100 巻 9 号 p. 957-

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抄録

3例の家族性良性慢性天疱瘡(以下BFCP)患者の各々別の部位より採取した2個の病変部皮膚および3個の非病変部皮膚から小皮片を作製後,器官培養を行い,その形態学的変化について経時的に観察した.その結果病変部皮膚の培養系では,生検時,即ち培養前既に明瞭な棘融解性水疱が観察され,それらは経時的に増強された.そこで本症における棘融解の発生機序を明らかにし,またその形成を抑制し得る物質を検索する目的で,この系にbetamethasone,retinol acetateをあらかじめ添加培養し,棘融解に対する抑制効果を検討したところ,いずれの物質も抑制効果を示さなかった.一方,BFCP患者より採取した3個の非病変部皮膚を用いて同様に培養を試みたところ,培養前に棘融解性水疱はほぼ認められなかったが,培養開始後少なくとも72時間では明瞭な水疱が形成された.この系に上記薬剤を各々添加培養したところ,棘融解性水疱の形成は,betamethasoneの添加によりほぼ完全に抑制されたが,retinolの添加では抑制されなかった.これらの結果より,①強力なステロイド外用剤は本症の水疱形成を抑制しうること,また,②本実験モデルは本症の発症病理解明のみならず,新しい治療薬開発のためにも有用であることが示唆された.

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© 1990 日本皮膚科学会
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