日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: SI-1
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シンポジウム I
視覚障害者の同僚を持って考えたこと、及び、サポート事例の紹介
*吉江 和夫
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抄録

 1993年に全盲の青年と出会い、彼のサポートを始めてからはや13年が過ぎた。その間に、二人は社内異動も経験し(広報部→お客様相談室)、彼の仕事範囲は大きく拡大した。広報部では視覚障害者への情報提供だけを担当していたが、異動によりお客様への電話対応が主業務となり、更に2003年からはe-mailへの対応を主に担当して忙しい日々を過ごしている。
 しかし正直なところ、彼の入社当時に、彼の今日の仕事ぶりを予測できた人はいなかった。この順調なキャリア形成には、会社の事業内容、社風、仕事内容、個人的特性(性格、特技、目指す方向、能力・技能等)など、多くの要因が関与していると思われるが、部内のみならず他部署にも多くの協力者を得て、様々な工夫を積み重ねることができたことが大きいと私は考えている。今回は、彼と13年間共に働いた者の立場から、これまでに行った事例の一部及び課題を紹介させていただく。
1.通勤の安全について
 本人の意思を尊重しながら専門機関と相談し、安全な経路を優先して選択した。会社近辺の横断歩道の音声化を警察署に依頼したこともある(一部導入)。
2.部所、社内でのサポート体制
(1)サポートの責任者は常に配置し、私が担当した。最初の1年はサポートに3割程度の時間を割き、その間に、部所の全員が分担してサポートできる(せざるを得ない)体制を作った(食事、行事、情報伝達等)。現在、サポートに費やす時間はゼロに近い。
(2)仕事で関係する部所に積極的に出かけた。これは、彼への理解者を増やし、仕事での連携、通勤での主体的な誘導など、大きな成果につながった。
(3)IT技術を積極的に取り入れてサポートに活用した。
3.課題
 データの集計や解析、表やグラフを活用した資料作成用のソフトウェアが見当たらず、これらに関わる業務(報告書の作成、他部署との情報交換会など)には参画できない。これは、今後解決したい大きな課題である。

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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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