日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: S101
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シンポジウムⅠ
「行きたい」から「行ける」へ! 旅のユニバーサルデザイン
*長橋 正巳
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抄録


 国交省・観光白書の「平成19年度観光の現状・国民の旅行等に関する意識の動向と実態」によれば今後の生活で重点を置きたい分野は「レジャー・余暇生活」が35.1%と最も多い。旅行は余暇生活において大きな要素のひつとだが加齢や障害を理由に旅をあきらめる方が多い。受け入れる旅行会社としても、対応が困難を理由に申し込みを拒絶している現状である。また、制度面として「バリアフリー新法」「補助犬法」など障害者の移動に関し法的整備が推進されているものの旅行業界自体の障害者理解が進まず旅のユニバーサルデザイン化にはまだ遠い。
 旅の効能は行くまでの期待感、旅行中の感動、旅行後の充足感であり、旅により元気になることである。旅で人と出会い、仲間をつくることで生きがいを感じQOLの向上に効果がある。特に障害を持っている方にとって旅に出ることは大きな自信となり生きる希望に繋がる。「行きたい」という思いを「行ける」にし、障害者が安心して、気兼ねなく旅ができるためにはソフト面における障害者理解教育の推進、旅行介助人材の養成、旅行介助ノウハウの確立が課題となる。また、ハード面においては施設のバリアフリー化はもちろん、旅行に特化した介助具・福祉用具の開発やレンタルシステムの構築が必要となる。
 バリアフリー旅行センターでは「誰もが一生涯、旅を続けられる環境づくり」を目指し課題解決に取り組んできた。今では90歳代の高齢者や障害を持っている方でも参加できる国内外のパッケージツアーを企画。視覚障害の方はもちろん脳血管障害や関節リウマチ、脊損・頚損、筋ジスによる肢体不自由な方が、日帰り旅行から遠くは南アフリカやペルー、ブラジルまでの年間約120本のツアーを楽しんでいる。旅のユニバーサルデザインを目指し「旅をあきらめない、夢をあきらめない」そんな旅づくりをしたい。

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