霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: C07
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口頭発表
ニホンザルのミトコンドリアDNA 非コード領域内の反復配列多型:房総半島の外来種交雑モニタリングおよびニホンザルの地域個体群調査への応用
川本 芳直井 洋司萩原 光白鳥 大佑池田 文隆相澤 敬吾白井 啓岡野 美佐夫近藤 竜明田中 洋之
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抄録

ニホンザルのミトコンドリアDNA非コード領域には160塩基の重複配列変異が局地的に知られていた(Hayasaka et al. 1991)。今回は、この領域の3’端部分で新たに発見した2塩基(CA)配列をモチーフにする反復配列の多型について報告する。この多型は九州, 四国, 中国地方のサルでは反復が0回もしくは1回と少ないが, 屋久島では例外的に4回になっていた。一方、紀伊半島を含む近畿以東のサルでは0回から最大6回までの著しい多型を示し、その分布には地域性が認められた。特に地理的に孤立する房総半島のニホンザルでは4回から6回の反復が観察され、非コード領域内の塩基置換突然変異と組み合わせると地域内で6種類のハプロタイプが区別でき、これらハプロタイプで特徴付けられる群れの分布が確認できた。一方、南房総の外来アカゲザル個体群にこの反復多型は認められず、検体はすべて0回反復であった。昨年度の千葉県内で実施した調査では、この反復多型を応用して、交雑の進むニホンザル生息地域の推定や、アカゲザル交雑群に移籍したニホンザル群生まれのメスの出自が推定できた。この反復多型は、外来種の交雑モニタリングやニホンザル個体群の地域間交流調査で有用な遺伝標識になると期待できる。

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© 2020 日本霊長類学会
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