日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第34回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S1-2
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シンポジウム1
NALTを中心とした上気道粘膜免疫システムのユニーク性:ヒトとマウスの相違点を理解したうえでの経鼻ワクチン開発に向けて
*清野 宏
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抄録

近年、新型インフルエンザウイルス(H5N1)やSARSコロナウイルスの流行などにより呼吸器感染症に対する早急な対策が求められている。その中で感染予防としてのワクチンは重要な手段である。従来の注射型ワクチンと異なり経鼻ワクチンは血液中の抗体産生だけでなく、感染防御の最前線とも言える粘膜面に抗原特異的な分泌型IgA産生や細胞性免疫を誘導する事ができる。 経鼻的にワクチン抗原を投与した場合、鼻咽腔に存在する免疫誘導組織としての鼻咽腔関連リンパ組織 (NALT)の役割は非常に重要と考えられる。ところがNALTの部位や形態など解剖学的特徴はヒトとマウスでは多くの相違点が知られている。例えばアデノイドや口蓋扁桃などワルダイエル扁桃輪はヒトの咽頭に存在するが、マウスの咽頭にリンパ組織は認められない。マウスの場合、鼻腔底粘膜にNALTが発達しておりヒトの扁桃に対応するリンパ組織と考えられている。最近、一部のヒト鼻腔粘膜にもリンパ組織が発見されたことから、マウスのNALTとの比較とその免疫学的機能解析が求められている。我々はマウスを利用してNALT発生のプログラムのユニーク性の解明を進めており、さらに同組織が抗原特異的免疫応答誘導の場である事を明らかにしてきた。経鼻ワクチン開発のためにはNALTを中心とした気道粘膜免疫システムのさらなる解明が望まれ、特にヒトとマウスの相違点を明らかにすることがヒトへの臨床実用化のためには重要である。

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© 2006 日本臨床免疫学会
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