関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O6-4 大腿骨転子部骨折術後に発症した慢性心不全の急性増悪に対して早期離床プログラムを実施 した一例
立花 祥吾浦田 龍之介梅木 伽那岩本 航平釜野 洋二郎増田 司木村 郁夫
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p. 39-

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抄録

【背景】大腿骨転子部骨折術後の急性期リハビリテーションは早期離床が推奨されているが、術後に心不全が増悪した患者に対する介入は確立されていない。心不全に対する急性期リハビリテーションは、角谷らの早期離床プログラムがADLの改善に有効と報告されている。今回、大腿骨転子部骨折術後に慢性心不全の急性増悪を呈した症例に対し、角谷らの早期離床プログラムに基づいた介入を行った結果、ADL の改善を認めたため報告する。本発表はヘルシンキ宣言に則り実施した。

【症例紹介】慢性心不全、重症大動脈弁狭窄症、胸部大動脈瘤、心房細動を有する80 歳代の女性。ADL は介助歩行レベルであった。

【経過および結果】右大腿骨転子部骨折を受傷し、3 日後に観血的整復固定術(γ-nail)が実施された。術後翌日に胸水貯留と呼吸困難が出現し、慢性心不全の急性増悪(NYHA4 度)と診断された。心不全症状に基づく段階的な離床と運動療法からなる早期離床プログラムを、術後翌日より開始した。術後14 日目に立位保持まで可能となり、股関節可動域訓練や下肢抵抗運動、平行棒内歩行を実施した。術後19 日目に3 日以内の1.8kg 以上の体重増加、23

日目に重度の貧血を示したため、離床は座位保持までに制限し、抵抗運動以外の下肢機能訓練を実施した。最終的には、術後48 日目に移乗までの離床段階で施設退院となった。初期評価時にNRS8 であった創部痛は退院時に

1 へ改善した。右股関節屈曲可動域は60°から105°、外転は20°から40°へ拡大し、伸展は退院時に0°であった。MMT は右腸腰筋、大腿四頭筋はGrade2 から4 へ向上し、中殿筋は退院時にGrade 3 であった。移乗動作時のBorg scale は15 から11 へ減少し、FIM 運動項目は24 点から36 点へ改善した。

【考察】本症例に対して早期離床プログラムに基づいた介入を実施した結果、心負荷に配慮しながらADL を改善することができた。今後は症例数を増やし、プログラムの効果について検討する必要がある。

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© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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