理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-2-1
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一般演題
進行性疾患を有する児童が在籍する一般小学校での施設改修に向けた関わり
~教育委員会所属の理学療法士として~
東城 真由美竹田 智之
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抄録

【はじめに】一般小・中学校へ入学・進学する児童生徒は増えてきているが、学校施設がバリアフリーになっている所はまだ数が少なく、児童生徒の入学に合わせて施設修繕を行うことがほとんどである。近年、学校長からの依頼を受けて施設修繕に関するアドバイスを行う機会が増えている。今回、進行性疾患を持つ児童に対して、身体機能の変化を予測しつつ,数年をかけた修繕計画に関わる機会を得たので報告する。

【方法】学校は校舎内にエレベーターと多目的トイレが設置されているが、体育館はエレベーターの無い別棟2階にある。校舎から体育館棟へは屋外通路を使用する。対象児童は小学1年生のデュシェンヌ型筋ジストロフィー児で、厚労省の機能障害度はStageⅡ-b、登下校は保護者の送迎で校内移動は独歩、ただし体育の授業後などは疲労により階段昇降が困難になる状況であった。また、駐車場から昇降口へと向かう途中にある約15㎝の段差が日によって乗り越えられず介助を要する頻度が増えてきたことで、学校長が修繕の必要性を感じ、建築局保全推進課職員、教育施設課職員、方面別学校教育事務所の担当指導主事を交えて検討を行った。

【結果】要改善個所を(1)登下校動線(2)体育館利用動線(3)プール利用動線(4)その他生活動線に分けてピックアップし、その対応策についてそれぞれの立場から意見交換を行った。(1)から(3)における課題のほとんどが段差解消であり、数年後の車いす使用を想定したスロープの設置やコンクリートならし、グレーチングの仕様変更であった。これらの改修時期についてはデュシェンヌ型筋ジストロフィー症の平均的な症状進行を元に優先順位を提示した。(4)では蛇口をレバー式でノズルの長いものに変更することと、進級に伴う活動階の変更に対して各階に車いすトイレの整備と各手洗い1箇所ずつの蛇口の仕様変更を提案した。また、校内移動等に使用できるよう車いすの貸出しを行い、体育館棟については階段昇降機の使用を提案しすでに導入済みである。

【結論】学校施設修繕については、学校長から教育施設課への申請に基づき現地調査などを経て予算計上され決裁後に着工となる。当然のことながら予算には限界があり指摘した改修箇所全てを一度に着工できないこともある。今回、疾患の障がい特性を説明したうえで使用頻度の高い場所から優先順位をつけ、次年度以降の工事で対応可能な事を提示した。また対象児童の現在の身体機能を考慮し、本人の意欲を妨げず状況に応じて移動手段を選択できるように、急激な症状進行に対応できるように先駆けての環境整備を提案し、校内支援の在り方についても助言を行った。このような提案は医学的な視点をも併せ持つ理学療法士であればこそ可能なものであると考える。このような依頼は今後増えることが予想され、教育委員会内の横の連携を生かしつつ、校内環境整備や校内支援の在り方についてこれからも提言していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】本発表にあたり、学校長ならびに該当児童の保護者に発表主旨、内容について説明を行い、文書にて同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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