理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-P-D-2-1
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ポスター演題
高校男子ボート競技選手に対する競技レベルと陸上におけるパフォーマンスチェックの関係
藤崎 友輝宮﨑 雅司中西 和毅井㞍 幸成榊間 春利
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抄録

【はじめに、目的】

ボート競技は足部から上肢へ力を伝えるスポーツであり、下肢全体の深屈曲から最大伸展までの動作を反復する競技特性がある。特に競技力を向上させるために水上で体幹を安定させる体幹筋筋力、下肢筋力、股関節、膝関節、足関節の柔軟性の維持向上は重要であるといえる。現在、当院では理学療法士の立場から、高校ボート競技選手に対して、障害予防や競技能力向上を目的としたメディカルチェックを定期的に実施している。その中で、身体機能評価として体幹筋機能、下肢筋機能、体幹下肢の柔軟性の3項目について選手のパフォーマンスチェックを行っている。しかし、これまで高校ボート競技選手を対象とした研究は少なく、本研究では全国大会に出場した経験のある高校ボート競技選手を対象として、競技能力と当院で実施しているパフォーマンスチェックとの関係について検討したので報告する。

【方法】

当院のメディカルチェックに参加した鹿児島県内の高校ボート部に所属する男子学生23名(平均年齢:17歳)に対してパフォーマンスチェックを行った。体幹筋機能を評価する項目として、①上体起こし、②Elbow to kneeクランチ(30秒間の回数を測定)、③V字クランチ、④伏臥上体反らし(保持時間を測定)、下肢筋機能評価として、⑤立ち幅とび、体幹下肢柔軟性評価として、⑥長座体前屈、⑦Wall toe distance、⑧踵殿距離テスト(Heel buttock distance: HBD)の8項目を実施した。対象者を全国大会出場経験のある選手12名(競技レベルの高い選手、High performance(HP)群)と全国大会出場経験のない選手11名(競技レベルの低い選手、Low performance(LP)群)に分類して各測定項目を比較検討した。2群間の比較には正規性の検定後にF検定を行い、各項目に適した統計学的検定法を用い、有意水準は5%とした。

【結果】

上体起こしとElbow to kneeクランチの回数はHP群がLP群と比較して有意に大きかった(p<0.05)。また、立幅とびの値と長座体前屈の距離においてもHP群がLP群と比較して有意に増加していた(p<0.05)。

【結論(考察も含む)】

ボート競技は、水上という不安定な環境下においてシートの前後移動が行われるため、体幹下肢筋機能や全身柔軟性の成熟度が要求される。今回の結果より、体幹下肢筋機能や柔軟性の成熟度を評価する陸上でのパフォーマンスチェック項目の値が選手の競技レベルによって異なることが示された。これは、我々が実施している陸上でのパフォーマンスチェック項目はボート競技の特性を反映している身体機能評価であると考えられる。また、これらのパフォーマンスチェック項目をボート競技選手の競技能力向上を目的に陸上でのトレーニング項目として取り入れて行くことも可能であると思われる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は対象者全員に十分な説明を行い、同意を得た。

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