理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-B-3-2
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ポスター演題
経皮的炭酸ガス療法により整形外科術後の関節可動域制限が改善した一症例
平林 卓己松場 萌恵野瀬 範久
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抄録

【はじめに、目的】

整形外科術後では、疼痛、腫脹、軟部組織の癒着などによって関節可動域(ROM)制限をきたし、術後の日常生活動作を大きく制限する。炭酸ガス(CO2)療法は経皮的にCO2を吸入させることでボーア効果を引き起こし、組織の血流増加や代謝促進に効果がある。これは整形外科術後においても対象組織の柔軟性が改善することによってROM制限の改善効果が期待できる。今回、整形外科術後にROM制限が生じた症例に対してCO2療法を実施したことでROM制限が顕著に改善した症例を経験したため報告する。

【方法】

症例は大腿骨顆上骨折を受傷し、当院で観血的整復固定術を施行された50代男性であった。術後の創部状態は良好であり術後14日で抜糸を行った。術後14日から21日までの膝屈曲ROMの変化は115°から120°であった。術後21日に患部の状態が安定して感染症状がないことを確認し、患側膝関節に対してCO2療法を開始した。CO2療法は通常の運動療法の前に毎日20分間実施した。測定項目は患側の膝関節を対象として周径、皮膚温、皮膚伸張率、皮膚硬度、膝屈曲ROMとした。皮膚硬度は超音波エラストグラフィーを用いて膝蓋骨上縁から1cm上方部分において表皮から深さ5mmまでの硬度を測定した。ROMは介入期間中の経時的変化を観察し、CO2療法開始1日目と7日目においては実施前後の比較を行い即時的な効果を確認した。

【結果】

CO2療法開始前のROMは120°であったのに対して、介入から7日間で141°まで改善した。CO2療法開始1日目と7日目における実施前後の比較において、周径は変化しなかったが皮膚温、皮膚伸張率、ROMはCO2療法直後に高値を示した。皮膚硬度はCO2療法直後において低値を示し、さらに介入7日目には1日目よりも安静時の皮膚硬度が低値を示して柔軟性の経時的な改善を認めた。CO2療法によって炎症、皮膚トラブル等の有害事象は発生しなかった。

【結論(考察も含む)】

CO2療法は皮膚組織の柔軟性を改善させることでROM制限の改善に有効であった。CO2療法は血流促進効果があることが報告されており、本症例においても皮膚温が増加したことから皮膚血流量の増加に伴って皮膚硬度が改善したことが考えられる。したがって、運動療法前にCO2療法を行うことで整形外科術後のROM制限に対してより高い改善効果が期待できる。

【倫理的配慮,説明と同意】

患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて意義、方法、不利益等について説明し同意を得て実施した。

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