理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

シンポジウム
ウィメンズヘルス・メンズヘルス
永野 忍
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. H1-38

詳細
抄録

 養成校にて理学療法士の育成に携わり早16年が経過致しました。この間,高齢化に対応するための介護保険制度の発展など社会情勢の大きな変化に伴い,理学療法士が活躍する領域も大きな広がりをみせています。理学療法士の活躍の場は医療領域に起点をもち,その後の介護領域,そして現在では加えて,健康維持や増進を目的とする保健領域へと広がりをみせており,理学療法士に課せられる責任はますます大きくなっております。この職域の広がりは,理学療法士の役割と責任の拡大を示しているのと同時に,理学療法士に対する質の担保が強く求められていると考えています。では,このような経過の中で,理学療法士の育成については,その質を担保できる体系・体制となっているのかと聞かれると,はなはだ疑問を持たざるを得ない状況と考えます。その理由として,養成校での理学療法士の教育の基盤となる『理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則』(以下,指定規則)の改定は,1999年を最後にこの20年間近く実施されておらず,当時の社会情勢を色濃く反映した教育課程のままであるといっても過言ではないと考えます。ただ救いなのはこの指定規則が,時の政府が打ち出した規制緩和を前提にしており,それまでの指定規則に示されていた具体的な科目やその授業時間などを完全に撤廃し,履修すべき単位数と大綱化された教育内容さえ遵守すれば,具体的な科目や授業時間等については各々の養成校で決めていいことになったことです。このように旧来に比して養成校の教育の独自性を打ち出しやすくなったことは大いに評価するところですが,この指定規則のもとで養成された理学療法士の状況から推察するに,ここ5,6年前ぐらいから本格的に注目されることが多くなってきたウィメンズヘルス領域に関する教育がほとんどなされていない印象を強くもっています。したがって,養成校において自発的にウィメンズヘルス領域に関する授業を展開していなければ,そこで輩出される理学療法士の同領域における質は担保されないのではないかと考えます。

 

 この度,平成32年度入学者以降を対象とした指定規則の改定が予定されています。社会のニーズに応える人材の輩出を行うのが養成校の責務である以上,ウィメンズヘルス領域への教育を養成校側がどのように考え,位置付けるかは大変重要な要素ではなかろうかと考えます。そこで,九州圏内の理学療法士養成校へウィメンズヘルスについての授業の開講状況や,今後の指定規則の変更にあたり同領域の授業の実施予定についてアンケート調査を実施しました。

 

 これから理学療法士の進出が大いに期待されるウィメンズヘルス領域について,必要な知識と実践できる技術の教育が必要なのではと考えています。

 

 本調査の結果を提示することで,ウィメンズヘルス領域での理学療法士の課題と展望について関係者の皆様と共有できたらと考えています。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top