理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
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事例・症例セッション「難病者等の在宅支援事例」
住宅型施設におけるALSのコミュニケーション支援
白井 誠村木 貴洋加川 翔太
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p. G-54

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抄録

【はじめに,目的】当社は埼玉県三郷市・吉川市において,神経難病のケアを専門とする住宅型4施設を運営している。訪問系の看護・介護・リハビリテーション(リハ)の専門職が住宅系職員と連携し,生活を支えている。2018年6月時点では,20名を超えるALS患者が入居,大半は侵襲的呼吸補助(TPPV)となっており,生活ではコミュニケーション支援を重視している。今回,事例検討として,住宅型施設におけるALSのコミュニケーション支援について提示する。

【方法】60歳代,男性,診断名:ALS,歩行障がいから始まり経過6年,TPPV後4年,当施設入居後3年,ALS機能評価スケール:0点,長谷川式認知症スケール:27点,随意運動:瞬目と水平方向の眼球運動のみ,であった。コミュニケーションは透明文字盤を使用し,瞬目をYesとしていた。理学療法士は訪問看護ステーションから週1回の頻度で訪問していた。X年Y月,瞬目不可となり外眼筋運動系以外の随意運動が発現できない状態となった。コミュニケーションは水平方向の眼球運動によるYesの反応のみであった。施設内でケア会議を開催し「眼球運動によるコミュニケーション」の支援体制の強化を行うことになった。X年Y+1月,リハ部内で残存機能の検討を進め,「頭頚部伸展位の過緊張が瞬目や眼球運動に悪影響を与えている」と評価した。このことをケアチームの共通認識として,コンディショニング(身体および環境の調整)を進めた。身体調整では頭頚部の可動性改善や眼球の乾燥防止に努めた。居室の環境調整では眼球運動の範囲に応じてテレビを設置し,室内の明るさは羞明のため必要最低限とした。ポジショニングは頭頚部・体幹の屈曲を強化した。コミュニケーション手段は透明文字盤および口述文字盤とし,この支援技術の勉強会を随時開催した。

【結果】X年Y+5月,合目的な水平方向の眼球運動が可能となり,ケアスタッフ全員が「眼球運動によるコミュニケーション」を取れるようになった。手段は透明文字盤および口述文字盤とした。また,瞬目~閉眼が一部可能となり,眼球の乾燥や羞明は軽減した。

【結論】コミュニケーション支援では,多職種のケアチームが共通認識を持つことが重要である。この視点は「コンディショニング=身体調整+環境調整」であり,理学療法士のリーダーシップが期待される。

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© 2019 日本理学療法士協会
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