理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
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足関節捻挫の予防を考える
浦辺 幸夫
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p. F-20

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抄録

 足関節捻挫は最も頻発するスポーツ外傷であることはよく知られている。再発がたいへん多く,捻挫を繰り返すことで,慢性捻挫=足関節不安定症が永続することになる。足関節捻挫予防については,様ざまな見解があり,いくつもの試みがなされているが,決定的なものはないといってよいだろう。

 2016~17年に理学療法士やアスレティック・トレーナーに対して,足関節捻挫の治療の実際について調査を行った。結果としては,①医療機関の外来で足関節捻挫を治療する機会は必ずしも多くない,②治療を担当する理学療法士はきちんと対応しようとている,③捻挫直後から治療を開始すれば早期スポーツ復帰が可能になる,④疼痛や腫脹が長く続くことで受診した者は治療に難渋する,⑤復帰基準を誰がどのような基準で決めるかが重要である,というようにまとめられた。多くの理学療法士は「足関節捻挫の予防は可能である」と回答していた。

 2018年に大学サッカー選手に対して足関節捻挫の調査を行った。約80%が過去に捻挫しており,その90%が疼痛の残存したままスポーツ復帰を試みていた。捻挫をした際に医療機関に行く者と行かない者に約半数ずつに分かれた。医療機関を受診した者の約70%が,継続して治療したが,スポーツ復帰のレベルが落ちたとする者も多かった。

 足関節捻挫については,予防の概念が膝ACL損傷予防よりさらに希薄であろう。足関節や足がどのような状況になると捻挫するかについては,膝関節の損傷以上に理解が難しい。また,捻挫により損傷する靭帯や損傷程度,それに伴う症状についての知識がほとんどなかった。したがって,予防トレーニングがほとんど行われていない。また,テーピングや装具の固定力に頼ると,安心感が高まることも事実である。足関節捻挫については予防の前に,まずきちんとした治療を行う必要性と,再発予防の重要性を選手に伝えていくことが不可欠と結論した。このような調査結果から,予防のためにスポーツ理学療法士が行える具体的な方法を提案したい。

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© 2019 日本理学療法士協会
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