理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-S-2-4
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口述
急性散在性脳脊髄炎により右下肢麻痺を呈した女児に外来理学療法を経験した一例
長島 淳池宮城 麻美
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抄録

【はじめに・目的】

急性散在性脳脊髄炎(Acute Disseminated Encephalomyelitis:以下,ADEM)発症後,右下肢麻痺が残存した症例に対し,運動療法・装具療法により歩行能力が改善した症例を経験したので報告する.

【症例紹介】

5歳 女児 X年7月中旬,県外へ旅行のため空港に到着時,右下肢麻痺を認め,近隣大学病院入院.ADEMと診断され,ステロイドパルス療法,免疫グロブリン療法,リハビリテーション実施.約1か月後の8月中旬に帰沖.右下肢麻痺残存による歩行障害,階段昇降困難の改善目的に,当院リハビリテーション科受診.

【経過】

初期評価として,右下肢ブルンストロームステージⅤ,右大臀筋~足趾屈筋群までMMT3レベルの筋力低下,下肢深部腱反射亢進,歩行立脚時の反張膝,遊脚期の背屈低下があり,右膝と足首の痛みの訴えが認められた.また,階段昇降時の膝折れと反張膝による不安定さから階段昇降は困難であった.そこで下肢筋力向上,バランス能力向上による動作改善を目的に週に3回程度外来理学療法開始.約2週間後の幼稚園登園時より,半日程度で膝の痛みが出現し,運動会の練習などは見学となっていた.このころには,足首の痛みは改善し,足趾の随意性向上が認められていたため,主に膝の保護目的にて装具検討を実施.既製品の膝サポーター(軟性膝サポーター支柱付き:敬愛義肢材料販売所)では小児に対応しておらず,サイズ調整の加工が必要な状態であった.小児用のCBブレース(CB-BaCknee:佐喜眞義肢製作所)では膝の安定性向上みられるも,幼稚園では半ズボン着用のためベルクロにより対側下肢内側への擦過傷が生じてしまった.また,テーピングによる固定も実施したが,本人のテープへの拒否が強く持続的な使用が困難であった.そこで,義肢装具士と検討し大人用の両側支柱付き肘サポーター(肘関節用サポーター3:日本シグマックス株式会社)にオプションの過伸展防止ストラップを装着し運動療法を実施.その結果,激しい運動にもずれることなく対応可能となった.外来受診後約1ヶ月程度で軽いかけっこやスキップが可能になり,週1回程度の通院へ変更した.約2か月後には幼稚園の運動会への参加が可能となり,約3ヶ月経過後には,ブルンストロームステージⅥ,下肢MMT4レベルまで改善された.歩行時の反張膝は軽度残存みられるものの,10m歩行速度は,当初15秒27steps程度かかっていたものが7秒26steps程度まで改善された.

【考察】

ADEMの好発年齢は小児に多く,脳脊髄における散在性の多発性病巣により様々な神経症状を呈する.全体としての予後は比較的良好で,数日で回復することもあるが,回復に数か月要する場合も多いとされている.そのため,今回の症例のように回復段階や年齢に応じた運動療法の提供や装具検討などが必要だと考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づいて,症例と家族に口頭にて説明を行い,同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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