理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: K-1-2
会議情報

企画演題
多施設前方視的調査から検討した急性期脳卒中患者の合併症発症に関連する予測因子
國枝 洋太三木 啓嗣山崎 諒介石井 頌平片倉 哲也深田 和浩佐藤 博文小林 陽平長谷川 光輝井上 真秀藤野 雄次
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに・目的】

 急性期脳卒中患者の合併症は,死亡率の上昇のみならず機能的転帰不良とも関連するため,脳卒中治療ガイドライン2015では予防や早期対応が推奨されている.脳卒中後の合併症出現に関連する因子の報告は多々あるものの,身体機能や動作レベルを加味して大規模に検討した報告は少ない.そこで本研究の目的は,急性期総合病院5施設において,脳卒中後の入院中合併症発症に関する予測因子を検討することとした.

【方法】

本研究は,多施設前方視的コホート研究とした.対象は,2017年1月から6月に研究参加施設に入院し,研究参加同意が得られた急性期脳卒中患者468名(平均年齢70.8歳,男性63.9%,離床開始病日中央値3.0日,平均在院日数23.6日,自宅復帰率39.3%)とした.検討項目は,基本属性,医学的状態の他,身体機能評価として,初回評価時のNational Institute of Health Stroke Scale (NIHSS),離床時のTrunk Control Test (TCT),改訂版Ability for Basic Movement Scale,Functional ambulation categories (FAC),Barthel Index (BI)を検討した.群分けは,入院中に合併症(肺炎,尿路感染症,深部静脈血栓症,うつ)を発症した患者と発症しなかった患者の2群とした.統計解析は,合併症発症有無における2群間比較でp < 0.05の項目により多重ロジスティック回帰分析を実施した.また連続変数が抽出された場合は,ROC曲線によるカットオフ値を算出した.

【結果】

 合併症発症患者は38名(8.1%)だった.病前mRS( < Ⅲ,合併症あり群81.6%,合併症なし群91.6%,p = 0.048),脳卒中診断(脳出血,55.3%,27.4%,p < 0.001),医学的治療介入(あり,26.3%,11.6%,p = 0.015),初回評価時NIHSS(14.1 ± 10.4点,5.8 ± 6.6点,p < 0.001),離床時TCT(30.3 ± 33.3点,65.0 ± 37.8点,p < 0.001),離床時FAC( > 3,7.9%,21.2%,p = 0.050),離床時BI(10.7 ± 21.2点,42.5 ± 31.7点,p < 0.001)を使用した多重ロジスティック回帰分析における合併症発症の予測因子は,脳出血患者(Odds Ratio (OR)2.43,p = 0.018,95%CI1.17-5.05),初回評価時NIHSS(OR1.05,p = 0.029,95%CI1.01-1.10),離床時BI(OR0.96,p = 0.001,95%CI0.94-0.98)だった.合併症発症のカットオフ値は,初回評価時NIHSS9.5点(感度63.2%,特異度80.7%),離床時BI22.5点(感度86.8%,特異度65.1%)だった.

【考察】

 急性期脳卒中患者における合併症発症の予測因子は,脳出血患者,初期評価時NIHSS,離床時BIが抽出され,そのカットオフ値は,初期評価時NIHSS9.5点,離床時BI22.5点であった.以上より,脳出血患者,初期評価時NIHSSが10点以上または離床時BIが20点以下の患者は合併症発症リスクが高いため,発症後早期から積極的に合併症を予測した予防もしくは改善を図る理学療法介入を行うことが重要である.しかし,合併症の種類別や発症時期,脳卒中重症度を考慮した検討は今後の課題である.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,当院および研究参加各施設の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.本研究は,対象者本人およびご家族に研究の概要や匿名化,データ使用方法などの説明をヘルシンキ宣言に則り書面で行い同意を得たうえで実施した.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top