理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-6-8
会議情報

ポスター
急性期病院における軽症脳梗塞患者の自宅退院に影響する因子についての検討
~多施設共同研究~
小林 陽平杉水流 豊宮園 康太飯島 崇敬仲 桂吾深田 和浩藤野 雄次井上 真秀三木 啓嗣佐藤 博文長谷川 光輝西川 順治牧田 茂
著者情報
キーワード: 脳梗塞, 軽症例, 予後予測
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに・目的】

早期に自宅退院が可能かあるいは転院加療が必要かを見極めることが求められる急性期病院の臨床では、軽症脳卒中患者の転帰先を決定する際に、何を指標として転院か自宅退院かの判断を行うべきかに難渋する。本研究では急性期病院5施設が共同で、脳梗塞軽症例における自宅退院可否の予測因子を明確にすることを目的とした。

【方法】

2017年1月から6月に共同研究5施設に入院し理学療法を処方され、症例登録による本研究に対する書面同意を得た脳梗塞404例のうち、再発および死亡例ならびに理学療法(PT)開始時National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)10点以上を除外した226例を対象とした。調査項目は年齢、性別、発症前Modified Rankin Scale(mRS)、離床開始時のBarthel index(BI)合計点および移乗、トイレ、移動の各部分点、下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)Ⅰ~Ⅴ(麻痺あり)、Ⅵまたは無症状(麻痺なし)、平均在院日数、PT開始日、離床開始日、1日あたりのPT平均単位数に加えて、患者背景として同居家族数、家族協力度(小山ら、2008)の0~3(低)、4~5(高)および転帰とした。これらをその転帰から自宅退院群と転院群の2群に分割し、さらに、NIHSSが5-9点(軽症)の48例と、NIHSS4点以下(極軽症)の178例に分けて、t検定とχ²検定を用いて群間比較した。また、自宅退院に影響する因子を抽出するために、年齢、入院前mRS、下肢BRS、離床時BIの各項目点と合計点、PT平均単位数を独立変数、自宅退院の可否を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。解析にはIBM社製SPSS statistics 20を使用し、有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】

自宅退院群は転院群と比較して年齢と入院前mRSが有意に低値で、下肢BRSおよび離床時BIにおけるトイレ、移乗、移動の各項目点および合計点が有意に高値であり、PT平均単位数が有意に少なかった。軽症例と極軽症例に分けた解析では、極軽症例の自宅退院群は年齢が若く、下肢BRSが良好で、入院前mRS低値であり、自宅退院率は軽症例と比べて有意に高値であった。多重ロジスティック回帰分析では、入院前mRS、下肢BRS、離床時BIが抽出されたが、軽症例に限った解析では離床時BIのみが抽出された。

【考察】

NIHSS9点以下の初回脳梗塞症例においては、入院前mRS、下肢BRS、離床時BIが自宅退院の可否に影響しており、PT開始時の運動機能ならびに日常生活活動能力が急性期自宅退院可否判断の予測因子であると考えられたが、今後はさらに社会背景を含めた因子も加えて検討することも必要と考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、共同研究5施設の倫理委員会の承認を得て実施した。患者本人または家族に説明し、本研究に対する書面同意を得ており、得られたデータは匿名化を行い個人が特定できないよう配慮した。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top