理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-6-4
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ポスター演題
臍帯血移植前の低栄養と1年全生存率の関連
市川 雄大佐藤 惇史高木 伸介石山 大介西尾 尚倫木村 鷹介小山 真吾音部 雄平谷口 修一山田 実
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抄録

【はじめに、目的】造血幹細胞移植(以下,移植)前の低栄養は,移植後の全生存率に関連すると報告されている.しかし,これらの報告は骨髄移植や末梢血幹細胞移植を対象とした報告であり,臍帯血移植(Cord blood transplantation:以下,CBT)における報告は少ない.そこで本研究の目的は,CBT前の栄養状態を治療前固形がん患者の栄養状態指標であるGlasgow Prognostic Score(以下,GPS)を用いて評価し,CBT後1年全生存率との関連を明らかにすることとした.

【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究である.適格基準を満たした対象者は213名であった.対象者は当該施設に入院し,2013年1月から2016年12月の期間にCBTを施行された20歳以上の血液疾患患者とした.除外基準は,二次性がん,移植経験のある者,Performance status scale (以下,PS) > 1の者,CBT後1年間追跡困難であった者とした.調査項目は,年齢,性別,BMI等の基本属性や医学的情報,CBT実施日または前日の血清アルブミン値(以下,Alb),C反応性蛋白値(C – reactive protein : 以下,CRP),ヘモグロビン値(以下,Hb),クレアチニン値(以下,Cr)等の血液生化学検査値を診療録より収集した.CBT関連情報は,疾患リスク,染色体異常,合併症指数,ヒト白血球抗原適合性,CBT前化学療法の種類等を造血幹細胞移植一元管理プログラムより収集した.アウトカムはCBT後1年間における生存の有無とした.CBT前の栄養状態は,GPSを用いて3群に分類した(Group1 : Alb > 3.5mg/dl・CRP < 1.0mg/dl,Group2 : Alb > 3.5mg/dl・CRP > 1.0 mg/dlおよびAlb < 3.5mg/dl・CRP < 1.0mg/dl,Group 3 : Alb < 3.5 mg/dl・CRP >1.0 mg/dl).統計解析は,単変量解析としてGPSによる3群間比較を行った.さらに,従属変数に生存の有無,生存変数に死亡発生までの期間,独立変数にGPS3群を,さらに調整変数として単変量解析にてp < 0.05または全生存率との関連が報告されている因子を投入したコックス比例ハザード分析(強制投入法)を行った.

【結果】対象者(平均年齢[歳]: 55±12.5, 男性 : 63.4%)をGPS3群に分類した(Group1 : n = 51,Group2 : n = 76,Group 3 : n = 86).GPS3群間比較では,年齢,性別,PS,疾患リスク,合併症指数,Alb,CRP,Hb,Crに有意差を認めた(p < 0.05).1年全生存率はGroup1,2,3それぞれ75%,59%,45%であった(p = 0.002).コックス比例ハザード分析の結果,Group1をReferenceとした場合のGroup2およびGroup3の調整済みハザード比(95%信頼区間,p値)は,それぞれ0.26(0.62 – 2.58,p = 0.52),2.19(1.09 - 4.43,p = 0.029)であった.

【結論】本研究の結果からCBT前における低Alb・高CRPの者は,年齢,性別,BMI,疾患リスク,合併症指数を考慮しても,CBT後の1年全生存率が低いことが示された.したがって,骨髄移植や末梢血幹細胞移植による先行研究と同様に,CBTにおいてもCBT前の栄養状態が1年全生存率に影響することが示された.

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当該施設倫理審査委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に則って実施した.(承認番号:1560-H/B).後ろ向き研究であることから,あらかじめ研究に関する情報(目的,利用する項目,利用者,管理責任者)について当該施設ホームページで公開し,研究対象者等が拒否できる機会を保障する方法をとった.

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© 2019 日本理学療法士協会
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