理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-4-5
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ポスター演題
地域在住軽度認知機能低下者のおける等尺性膝伸展筋力測定の検者内再現性と妥当性
大森 圭貢植田 拓也佐々 直紀田中 繁弥田中 千香山上 徹也柴 喜崇
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抄録

【はじめに、目的】等尺性膝伸展筋力は,種々の移動能力と関連することが報告され,身体の機能,能力の回復を目的とした介入効果の指標とされることが少なくない.本研究の目的は,地域在住の軽度認知機能低下者に対する等尺性膝伸展筋力測定の検者内再現性と妥当性を検証し,身体機能評価としての等尺性膝伸展筋力の使用可能性を明らかにすることである.

【方法】対象者は,A市で認知機能低下予防事業に参加した地域在住高齢者38名(平均年齢74.3歳,男性9名・女性29名)である.対象者のJapanese version of Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)は平均23.4点であり,最低値は18点,最高点は28点であった.いずれの対象者も日常生活での歩行移動には,問題がなかった.これらの対象者の等尺性膝伸展筋力,5m快適歩行所要時間(秒),5m最大歩行所要時間(秒),Timed Up and Go Test(TUG)(秒)を測定した.等尺性膝伸展筋力は,OG技研社製筋力測定機器アイソフォースGT-300 を使い,機器の固定を徒手ではなく,紐を用いて固定して測定した.測定は,まず対象者に椅子座位をとらせ下腿を下垂させた.次に対象者の下腿の内外果直上にセンサーアタッチメントを取り付け,センサーアタッチメントと結びつけてある紐を椅子の脚と結びつけた.その後,対象者が膝を伸展した際に膝関節が90度になるように紐の長さを調節した.そして測定の際は,できるだけ力いっぱい膝を伸ばすように対象者に教示を行い,2回測定をした(N).5m快適歩行と5m最大歩行のそれぞれの所要時間は,アニマ社製シート式下肢加重計ウォークWay MW-1000上を,通常歩いている速さとできるだけ速く歩くにように指示した2つの条件で計測した.計測はそれぞれの条件で2回ずつ行った.TUGは,できるだけ速く行うように指示した条件で2回測定をした.そして5m歩行およびTUGによって得られた2回の測定の平均値を算出した.分析は,まず2回の等尺性膝伸展筋力の値をPearsonの相関係数を用いて検証した.次に2回の等尺性膝伸展筋力の平均値を体重で除した値を算出し,5m快適歩行所要時間,5m最大歩行所要間,TUGとそれぞれの相関をPearsonの相関係数を用いて検証した.

【結果】1回目と2目の等尺性膝伸展筋力の測定値間の相関係数は0.90であり,有意な正の相関があった(p<0.01).2回の等尺性膝伸展筋力の平均値と5m快歩行所要時間,5m最大歩行所要時間,TUGとのそれぞれの相関係数は,順に-0.38(p<0.01),-0.43(p<0.01),-0.45(p<0.01)であり,それぞれ有意な負の相関があった.

【結論】地域在住軽度認知機能低下者の身体機能評価としての等尺性膝伸展筋力の測定は,検者内再現性およびその外的妥当性の点で使用可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は高崎健康福祉大学の研究倫理委員会の承認(第2728号)を受け,全ての対象者には書面にて説明を行い,同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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