理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-13-6
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口述演題
学外における運動活動と指尖床間距離との関連性
-2年間の運動器検診の調査結果の比較-
重島 晃史片山 訓博宮﨑 登美子山﨑 裕司
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抄録

【はじめに、目的】

平成28年4月から学校保健安全法に基づき,学校健診において運動器検診が導入された.文部科学省の調査(平成20年)では継続的な運動習慣を有する場合,そうでない集団よりも体力が優れていることを示唆している.しかし,運動器検診の結果から同様の傾向が認められるかどうかは報告されていない.そこで今回,平成28年度と平成29年度の2年間の運動器検診の結果から,学外での運動活動と柔軟性の指標の一つである指尖床間距離との関連について検討したので報告する.

【方法】

対象はA市内の小学生291名であった.事前に各家庭に運動器検診の項目の説明書とアンケートを配布し検査を周知させた.運動器検診は理学療法士3名が補助し,2日間にわたって実施した.指尖床間距離の検査は閉脚立位を開始姿勢とし,膝を曲げないようできるかぎり体幹を前屈して指先を床まで伸ばしてらった.判定では床に指が接地した場合を接地群,接地しなかった場合を非接地群とし,非接地群のみ指尖床間距離を測定した.2年目の接地状況の変化について,指尖床間距離の短縮および接地を新たに認めた群を改善群,接地を維持した群を良好群,継続して非接地だった群を不良群,距離の延長および接地が新たにできなくなった群を悪化群とした.学外での運動活動の実態はアンケートから抽出し,調査時点で運動活動をしていれば活動あり群,そうでなければ活動なし群とした.運動活動の変化についても調査し,2年目の調査時点で運動活動に新たに参加していた場合を参加群,運動を継続した群を継続群,経年的に運動に従事しなかった群を未実施群,1年の間に取りやめていた場合を中止群とした.データ解析では,平成28年度と平成29年度の間で接地群・非接地群および運動活動の有無の割合をMcNemar検定にて比較検討した.また,接地状況の変化と運動活動の変化との関連についてχ2検定にて検討した.

【結果】

接地群の割合は平成28年度,平成29年度の順に64.7%,69.3%,活動あり群の割合は54.8%,51.9%で有意差は認められなかった.接地状況の改善群,良好群,不良群,悪化群の割合は14.5%,57.3%,6.6%,21.6%,運動活動の参加群,継続群,未実施群,中止群の割合は10.4%,41.5%,34.9%,13.3%であった.接地状況の変化と運動活動の変化との間には有意な関連を認め,悪化群の割合は参加群,継続群,未実施群,中止群の順に16.0%,15.0%,21.4%,46.9%で,柔軟性が悪化した割合は中止群で大きかった.

【結論】

縦断的な調査において柔軟性の改善は十分に得られなかった.しかし,運動の中止は柔軟性を悪化させる可能性があるものと考えられた.また,運動器検診の結果は身体状況を妥当に追跡することができ,運動器障害の予防に活用できる可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究に先立って小学校養護教諭から全家庭に紙面で検診の内容と意義,研究の趣旨および目的を連絡した.そのうえで本人,保護者より同意を得た後に検査を実施した.データ管理はパーソナルコンピュータを利用し,データファイルにパスワードをかけ管理した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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