理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-5-5
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ポスター演題
当院における生活習慣病指導に対する理学療法士の取り組みと課題
岩﨑 孝俊林 大二郎倉澤 千尋二階堂 暁幡 芳樹
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抄録

【はじめにおよび目的】

 自施設では心臓疾患患者の再発予防のため、2011年の開院時より心臓リハビリテーション(心リハ)に積極的に取り組んでいるが、生活習慣病患者も多数いる。こういった患者に対し、2016年11月より、医師・理学療法士・管理栄養士による外来生活習慣指導を導入した。この中で理学療法士は運動面を担当し、心肺運動負荷試験や身体機能評価の結果に基づき運動処方・運動指導を行っている。導入から約1年が経過した現状で、介入患者における運動指導効果の検証と今後の課題を模索することを本研究の目的とする。

【方法】

2016年11月から生活習慣指導外来を受診し、経過をフォローし得た患者を対象とした。調査項目は運動に対する行動変容(SOC)を聴収し、握力、片脚立位時間(OLST)、FFD、2ステップテスト、5回椅子立ち上がりテスト(STS-5)、運動負荷試験を行い、フォローアップ時との変化を検証した。

【結果】

 対象となった患者は41例。年齢は平均67±11歳、再指導期間は平均9.6±2.9ヶ月であった。症例の基礎疾患の内訳は心疾患30例、高血圧30例、脂質異常症31例、糖尿病13例、肥満21例(重複含む)であった。指導後においてSOCには変化が認められなかった。身体機能においてOLST(44.9秒→48.5秒)、STS-5(7.2秒→6.5秒)の変化が認められたが、体重、BMI、腹囲および、その他の身体機能変化は認められなかった。

【考察・展望】

 心リハでの介入は定期的な運動療法を行う過程で多職種による包括的介入が絶え間なく行われ好ましい結果が得られている。一方、今回の介入は外来で1回評価と指導を行うのみで、その後の実践は患者任せとなっている現状がある。単に評価を行い結果説明し指導するだけでは患者に行動変容を生じさせ、臨床的に良好な改善に継げることは難しいことも明らかとなった。

 一方、OLSTやSTS-5など自宅内でも簡便に行える運動指導に関しては一定の運動効果が得やすいため、引き続き継続して行う必要があると考えられる。

 今後の課題は指導内容や指導頻度・介入方法などについても検討していく必要があると考えている。指導頻度に関しては定期的外来受診時に状況の確認などをおこなっていく。また、公共の体育施設や市の介護予防サロン活動などの利用を積極的に進めることなども有効と考えられることから、行政や福祉施設との連携を含め、より多くの患者の健康管理・改善に貢献していける土壌作りをしていくことが今後の課題と考えている。

【結語】

 生活習慣病の管理には単発の指導や検査の結果説明だけでは不十分である。特に運動面については継続的な関わりが有効と考えられ、理学療法士として関われる機会を院内のみならず、院外にも拡大して整備していくことが急務である。

【倫理的配慮,説明と同意】

 対象者には本研究の内容を十分に説明し、口頭および紙面にて同意を得た。なお、本研究は、みなみ野循環器病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した(MJ-001)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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