理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-3-18
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口述発表
術前より気管支狭窄をみとめ術後肺炎をきたした高度肥満の肺癌症例の経験
中村 真一郎永冨 史子森國 順也濱口 雄喜小川 拓也吉田 将和
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抄録

【背景および目的】肥満は腹腔内臓器に加え脂肪組織が横隔膜の動きを阻害することで,術後は容易に無気肺が生じやすく,呼吸器合併症のリスクとなる.今回,術前より気管支狭窄をみとめ肺癌術後に左肺炎をきたした高齢高度肥満患者を担当した.筋力,運動耐容能ともに低下したが,杖歩行にて自宅退院できた.その経過を報告する.

 

【症例紹介】83歳女性.身長148cm,体重77kg,BMI35kg/m2.活動性は屋内歩行自立.左大腿骨骨折後,人工骨頭置換術施行した入院中に左下葉肺腺癌と診断された.翌年に胸腔補助下左下葉切除術及びリンパ節郭清を施行した.術翌日,左肺炎を併発し,再挿管となった.術後5日目気管切開,術後18日目人工呼吸器離脱,術後24日目一般病棟へ転出,術後65日目退院となった.

 

【治療経過】理学療法は術後11日目に開始した.開始時は左無気肺と気管支狭窄及び粘稠痰の貯留を認めた.気管支狭窄と体型を考慮した体位ドレナージによる換気改善を促した.著明な膝伸展筋力(98N/80N)及び肺機能の低下(%VC:58%,%FEV1:62%)が生じ,起居動作に介助を要し,歩行は困難であった.人工呼吸器離脱後は早期から呼吸訓練を行い,広範な筋力低下と高齢症例であることを考慮し,筋力改善の課題は起居動作と歩行を中心に実施した.屋内環境及び肥満と運動耐容能低下による易疲労の観点から歩行は10mを反復的に実施した.さらにバランス課題を加え難度を上げながらADL練習を継続した.その結果,膝伸展筋力(168N/157N)及び肺機能の改善(%VC:66.3%,%FEV1:68.8%)によって起居動作の獲得,運動耐容能の向上が屋内杖歩行自立に繋がり,自宅退院となった.

 

【まとめ】術後呼吸器合併症により再挿管となった高齢高度肥満患者を担当し,病態と体型を考慮した理学療法が良好なgoalを達成できた.一方,肥満患者に起こりやすい無気肺や高齢患者にきたしやすい筋力低下は予防することが難しく,今後理学療法を行う上での課題にしたい.

 

【倫理的配慮,説明と同意】症例報告にあたり趣旨を症例に説明し,承諾を得ている.

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© 2019 日本理学療法士協会
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