理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-462
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ポスター発表(一般)
静岡県理学療法士会における地区・支部活動の紹介
会員数の増加に対する円滑な県士会の仕組みづくりを目指して
佐々木 嘉光澤野 公一花城 久子向井 庸内田 成男
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抄録

【目的】近年、日本理学療法士協会では会員数の増加に対して新人教育プログラムの開催頻度が追いつかず(症例検討を中心として)、参加の機会が少ないために履修率が低下する問題が生じてきている。一般社団法人静岡県理学療法士会(静岡県士会)は毎年300名近い新入会員が入会するようになっており、平成22年9月現在の会員数は1833名で全国でも10番目に多い数字になっている。静岡県士会では近年の急激な会員数の増加により生じる課題に対して、平成19年度より地区・支部活動の強化によって組織運営を強化してきた。今後、多くの県士会においても会員数増加に対する組織運営の変遷が予想される。そこで今回、県士会組織運営のノウハウを共有する目的で、平成19年度からの静岡県士会の取り組みをまとめたので報告する。

【方法】
<地区・支部組織導入の背景>
平成19年度の静岡県士会(会員数1200名)は東部・中部・西部の3地区に分けられ、地区理事が1名ずつ配置されていた。それまで地区理事が実施する事業は1)理学療法週間事業の地区毎開催、2)人材派遣依頼の対応、3)各種依頼に対する対応であった。静岡県士会の課題としては1)会員数増加に対する地域区分の見直しと県士会組織の検討、2)新人教育プログラムの履修率が向上するような組織運営(特に症例検討)、3)教育部と生涯学習部の負担軽減、4) 県士会活動に対する若手理学療法士の人材発掘と意識付け、4)連絡網の整備などがあった。このような課題に対し、平成19年度のはじめに静岡県士会長からマスタープランが提示され、1)各局・各部・委員会等の連携を強化する、2)地区区分の見直しを行う、3)会員増加に対する組織の検討などが目標に掲げられた。会員数の増加に対する組織運営と改組の取り組みは、主に組織検討委員と地区理事が協議を行い、理事会で検討して決定された。
<静岡県士会の取り組み>
平成19年度は地区症例検討会開催方法の検討と準備を行った。まずは地区担当者の必要な役割と人数を検討し、年度末に担当者を選出した(教育担当2名・生涯学習担当2名・広報担当1名)。また症例検討会開催案内などの広報を地区毎に充実させるため、静岡県士会ホームページに地区の案内ページを追加して整備を行った。平成20年度には、地区毎に新人教育プログラムの症例検討会(各地区年2回)を開催し、静岡県士会教育部の開催(年2回)と合わせて年間8回の開催とした。また地区区分の見直しを市区町村の会員数に応じて行い、各地区を3支部ずつ、計9支部に分けた。その後地区理事が支部長を選出し、9名の支部長が誕生した。平成21年度には、支部ごとに教育・生涯学習・広報担当者と部員(主に理学療法週間事業と庶務の担当者等)を1名ずつ配置し支部機能を強化した。平成22年度現在は、模擬的に新人教育プログラムを地区ごとに開催し、平成23年度以降には、地区毎に新人教育プログラムを開催・履修出来るように整備をすすめていく予定である。

【説明と同意】今回の報告にあたり、静岡県士会理事会の承認を得た。

【結果】平成19年度から21年度の変化をみると、症例検討会の発表者は19年度5名、20年度33名、21年度46名であった。参加者は19年度30名、20年度95名、21年度119名であった。その他の実績では、平成21年度の地区担当者配置後に理学療法週間事業のモデル事業をショッピングモールで実施し、来場者数は平成21年に129名、平成22年には460名であった。また平成22年度には地区連絡網(メール網とFAX網を併用)の整備が整い、情報の伝達が円滑になった。

【考察】静岡県士会の会員数増加に対して地区区分の見直し、支部長と担当者の組織編成、新人教育プログラムの開催頻度の見直し、連絡網の整備を行った。結果、症例検討会の発表者数と参加者数が大幅に改善し、県士会活動の運営に参加する若手理学療法士が増え、連絡網を整備する事が出来た。今回の静岡県士会の取り組みの短期的な成果としては、特に症例検討の履修の機会を提供出来たことである。また今後の静岡県士会の活動を担う人材(支部長と各担当者)を地区から発掘し育成する仕組みを整えた事は、長期的にみても大きな成果につながると考える。会員数が増加しても質の高い理学療法士を育成していくためには、より多くの会員に教育の機会を提供できるように組織の基盤を整備し、会員に学習・成長する機会を提供できるような県士会の運営が重要である。

【理学療法学研究としての意義】日本理学療法士協会の会員数の増加に対し、都道府県士会レベルでの組織管理をどのように展開するべきか報告したものは少ない。今回の実践を通した県士会活動の報告は、今後の都道府県士会組織運営においてひとつの参考になり、理学療法学の発展に寄与するものと考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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