理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-448
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ポスター発表(一般)
足関節底背屈筋に対するハイブリッドトレーニングシステムの効果
高野 吉朗羽田 圭宏松瀬 博夫田川 善彦志波 直人
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抄録

【目的】
我々は電気刺激による筋力増強法ハイブリッドトレーニングシステム(以下,HIS)を考案した.HISは拮抗筋を電気刺激し,その筋収縮を主動筋の抵抗とする方法である.主動筋は求心性運動を行い,電気刺激を受けている拮抗筋も求心性収縮になるが,主動筋の運動により引き伸ばされ遠心性収縮となり同時収縮が可能である.過去の研究において,手・肘・膝関節に試み,筋力増強や筋肥大の結果を得た.本研究の目的はHISの足関節底背屈筋への適応の可能性を明らかにする事である.
【方法】
対象者は健常男子大学生18名でHIS群9名平均年齢19.6±0.84歳と,コントロールとして従来の電気刺激群(以下,ES群)9名19.3±0.67歳に無作為に分けられた.運動期間は週3回6週間行った.運動方法はHIS群は両足関節背屈筋(前脛骨筋)と底屈筋(腓腹筋・ひらめ筋)のモーターポイント上に電極を貼付し足底背屈運動を行った.電気刺激条件は電気刺激時間各筋3秒,休止時間60秒,1セット10回,10セット,計19分,20~25RM程度の運動負荷で行った.ES群はHIS群と同じ電気刺激装置を用い,3秒で自動的に底屈筋と背屈筋の交互に電気刺激される設定で行った.筋力増強効果を確認する為に,等速性筋力測定機器Biodex3-PRO(Biodex社)を用いて,等尺性収縮(足背屈は底屈位10度,底屈は0度)にて足関節底背屈トルクを計測した.筋肥大の効果を確認する為に,MRI(東芝メディカル社)を用い,前頸骨筋・腓腹筋・ひらめ筋の筋横断面積を研究機関以外の施設の放射線技師が撮影した.画像解析は,第三者によりNIH Image (Image J)解析ソフトで計測された.統計解析は,SPSS ver14を用い,筋力と筋横断面積の前後変化を対応のあるt-検定を用い,5%未満を有意な変化とし算出した.
【説明と同意】
本研究開始前に久留米大学医学部倫理委員会の承認を得た.口頭と文書により電気刺激に関する危険性等を説明し同意を得た.また,申し出により実験の途中中止が可能な事も伝えた.
【結果】
足背屈筋力はHIS群が41.77±8.7Nmから47.28.±8.44Nm(P<0.05),ES群が41.92±6.45Nmから46.92±6.54Nm(P<0.05)であった.足底屈筋力はHIS群が73.91±18.87Nmから91.96±28.2Nm(P<0.05),ES群が82.21.±22.97Nmから86.5±20.19Nm(P=0.37)であった.前脛骨筋横断面積は,HIS群が9.44±1.24&#13216;から10.13±1.24&#13216;(P<0.05),ES群が21.7±3.89&#13216;から21.68±5.14&#13216;で(P=0.98)であった.腓腹横断面積は,HIS群が21.70±3.89&#13216;から21.68±5.14&#13216;で(P=0.98),ES群が19.44±2.11&#13216;から20.01±1.59&#13216;(P=0.06)であった.ひらめ筋横断面積は,HIS群が18.00±3.67&#13216;から20.01±4.79&#13216;で(P<0.05),ES群が16.48±2.44&#13216;から17.00±2.58&#13216;で(P=0.12)であった.
【考察】
筋力は,HIS群で底背屈に改善が認められたが,ES群では底屈には改善は認められなかった.前頸骨筋横断面積は,HIS群では改善が認められたが,ES群では認められなかった.底屈筋横断面積は,HTS群のひらめ筋横断面積で改善が認められたが,他は改善が認められなかった.HIS群がES群よりも改善項目が多かった事で有効性が明らかになった.本研究で特に興味深い点は,ひらめ筋の横断面積が改善した事で,従来の表面電気刺激ではひらめ筋等の深部筋への効果は低いが,HTSは主動作筋と拮抗筋の同時収縮により,深部筋の随意収縮が可能である事が改善につながったと推察される.
【理学療法学研究としての意義】
運動器疾患や高齢者で見られる足底背屈筋力低下,特にひらめ筋に対し、電気刺激と随意収縮を組み合わせた新しい運動方法であるHTSの可能性を明らかにした事に本研究の意義があると考えられる.

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© 2011 日本理学療法士協会
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