理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: Se2-078
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通所リハビリテーション利用者の外出状況に関連する環境因子の検討
加藤 剛平田宮 菜奈子柏木 聖代赤坂 清和
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抄録

【目的】日本において、地域在住高齢者の外出状況について、環境因子を尺度で評価し、明らかにした研究は少ない。本研究の目的は、国際生活機能分類に基づきKeysorら(2005)が開発し、6領域(家屋移動性、地域移動性、交通、住民の態度、移動支援用具、コミュニケーション支援用具)を持つ居住環境評価尺度、Home And Community Environment (HACE)日本語版を用いて、通所リハビリテーション利用者の外出状況に関連する環境因子を明らかにすることである。【方法】通所リハビリテーションA,B施設の利用者(n=77)を対象とした。60歳以上、認知症高齢者の日常生活自立度が1未満、要支援1から要介護度3までの要介護認定を受け、Barthel Index(BI)得点の歩行が5点以上を分析対象とした。評価項目は、外出頻度、環境因子(HACE日本語版における6領域ごとの得点)、基本属性(性別、年齢、脳血管障害の有無、整形外科的疾患の有無、住居形態、利用施設、1週間における通所リハビリテーションサービス利用回数、BI得点)とした。外出頻度は、通所リハビリテーション利用時間以外で少しでも家から外出した日数を5段階のリッカートスケール(全く外出しなかった=1点、1~2日=2点、3~4日=3点、5日以上=4点、毎日=5点)で評価した。分析は、外出頻度と基本属性および環境因子との関係と効果量を分析するためにSpearmanの順位相関係数およびCramerのV係数を算出した。また、基本属性を調整しうえで、外出頻度に独立に関連する環境因子を探索するために、多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。従属変数は、外出状況とし、対象者の外出頻度が「一週間で全く外出していない」と答えた者を「非外出群」、それ以外の「一週間に1日以上外出した者」を「外出群」に分け、二値化して用いた。独立変数は、外出状況と基本属性および環境因子の関連について単純解析を行いp値が0.25未満のものを投入した。なおBI得点は100点で、HACE各領域得点は中央値で区分した。性別、脳血管障害の有無、整形外科的疾患の有無、住居形態、日常生活活動能力およびHACE各領域得点は、χ二乗検定、Fisherの直接確率法にて比較した。また、年齢、1週間における通所リハビリテーションサービスの回数は、対応のないt検定を用いて比較した。但し、年齢、性別、日常生活活動能力、利用施設、一週間の通所リハビリテーション利用回数は調整すべき基本属性と考え、強制的にモデルに投入した。統計ソフトはSAS 9.1(SAS Institute Japan社製)を用いた。統計的有意水準は危険率5%未満とした。【説明と同意】対象者には、書面及び口頭で研究の説明を行い、書面にて研究への参加に同意が得られた者とした。なお、本研究は、筑波大学大学院医の倫理委員会にて承認を得ている(課題番号57)。【結果】対象者の平均年齢±標準偏差は74.2±6.8歳で、女性36名(47%)、男性41名(53%)であった。外出群65名(84%)、非外出群12名(16%)であった。外出頻度と基本属性との相関では、年齢(rs=-0.32, p<0.01)、BI得点(rs=0.34, p<0.01)、利用施設(V=0.36, p=0.03で有意な相関関係が示された。環境因子については、地域移動性領域得点と外出頻度との間で有意な相関係数(rs=0.28, p=0.01)が示された。外出群と非外出群の間で対象者の属性とHACE各領域得点を比較した結果、地域移動性得点が低い者に比して高い者は有意に非外出状況(4%vs.31% , p<0.01)と関連していた。また、p値が0.25未満の変数は、年齢、利用施設、日常生活活動能力、交通得点であった。多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)の結果、地域移動性得点が3点以上は、2点以下の対象者に比して有意に非外出状況(一週間に全く外出しない)と関連した(調整オッズ比[95%信頼区間], 8.92[1.84-68.30])。【考察】年齢、性別、日常生活活動能力、利用施設の差の影響を制御しても、地域移動性得点が高いことは、一週間における外出頻度が「ほとんどない」状況と独立に関連することが明らかとなった。地域移動性得点が高いことは、地域に物理的な障害が多いことを示す。これより、通所リハビリテーションを利用する軽~中等度の要介護高齢者の一週間における外出が「ほとんんどない」状況は、基本属性に関わらず地域環境の障害が多いことにより制限されている可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は理学療法士として国際生活機能分類上の環境因子に取り組んだ点で意義がある。謝辞:本研究は平成21年度文部科学省科学研究費若手研究B(課題番号:20790397)による。

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© 2010 日本理学療法士協会
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