理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-049
会議情報

一般演題(口述)
家庭用ゲーム機器を使用したGame Based Exerciseの効果
ランダム化クロスオーバー試験
菊井 将太福永 美幸久保 洋昭平岡 範人松尾 篤
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
近年,バーチャルリアリティ技術を応用したリハビリテーション(Game Based Exercise:GBE)の研究が注目されている. Youら(2005)は,慢性期脳卒中患者に対するGBEで,一次運動感覚皮質の有意な活動増加と運動機能の改善を報告している.また,Beketら(2007)は脊椎疾患や頭部外傷の患者に対して,ビデオゲームを用いた座位バランス練習を行い,モチベーションの向上と座位での動的バランス能力の改善を報告している.GBEの臨床研究は幾つかあるが,少ない症例数での検討がほとんどであり,まだ十分にその効果を検討されていない.よって,本研究では,入院患者43名に対し,通常のリハビリテーション(理学療法,作業療法,言語療法)に加えてGBEを実施し,その効果を検討したので報告する.
【方法】
研究参加に同意し,歩行のfunctional independence measure(FIM)5以上でWii Fit(任天堂)のゲーム内容を理解し,実施可能であった当院回復期病棟入院中の患者43名(男性16名,女性27名,平均年齢72.8±13.4歳,発症経過日数55.0±29.9日,平均入院時運動FIM 63.0±13.7)を対象とした.対象者には,通常のリハビリテーションに加えて,GBEとしてバランスゲームによる介入を行った.バランス練習には,Wii Fitのバランスゲーム「コロコロ玉入れ」,「ペンギンシーソー」等を用い,1日10分以上の介入を合計2週間実施した.評価項目は,Timed Up and Go Test(TUG),Functional Reach Test(FRT),30-sec Chair Stand test(CS-30),重心動揺計(グラビコーダGS-2000シリーズ:アニマ社製)を使用した30秒間静止立位時の矩形面積(REC.E)とした.研究期間は4週間とし,Wii実施群と非実施群の2群に分け,2週間で両群を入れ替えるクロスオーバーデザインで行った.前半2週間でWiiを実施した群をWii先群,後半2週間でWiiを実施した群をWii後群とした.評価時期は,介入開始時(初期評価),クロスオーバー時(中間評価),介入終了時(最終評価)とした.統計学的分析は,それぞれの群で反復測定分散分析を実施した.
【説明と同意】
対象者には,口頭にて研究内容を説明し同意を得た.
【結果】
TUG,CS-30では,Wii先群,後群ともに初期中間評価間で有意な改善(p<0.01)が認められ,中間最終評価間では有意な改善が認められなかった.FRTでは,Wii先群,後群ともに各評価時期間における有意な改善は認められなかった.REC.Eでは,Wii先群では,初期中間評価間で有意な改善(p<0.01)が認められ,Wii後群では,各評価時期間における有意な改善は認められなかった.また,全対象者とも安全にGBEを実施できた.
【考察】
TUG,CS-30においてWii先群,後群ともに初期中間評価間での改善が認められたことについては,自然回復の影響が考えられる.しかし,REC.EにおいてWii先群のみで初期中間評価間での改善が認められたことから,GBEによる訓練が効果的に作用した可能性が示唆された.今回は,GBEによる特異的効果はわずかであったが,通常リハビリテーションにGBEを組み合わせることで動作能力の漸増的な改善が観察された.また,対象者が楽しみながら,かつ安全にトレーニングに没頭できることが確認され今後の新しいリハビリテ&#8722;ション戦略としての応用が可能と考える.今後も,症例数を増やし,検証を進めていきたい.
【理学療法学研究としての意義】
本邦でGBEに関する検証を行なうことで,GBEによるバランストレーニングが現在のリハビリテーションにおける新たなアプローチ方法の一つとなりうる.

著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top