理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-526
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内部障害系理学療法
前立腺全摘術後の尿失禁に対する理学療法士の関わり
平野 正広廣瀬 昇
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抄録

【目的】骨盤底筋群の機能障害である尿失禁は腹圧性・切迫性・溢流性・反射性尿失禁など多岐にわたる.前立腺手術後には腹圧性尿失禁(以下、SUI)が生じるとされ、尿道抵抗の低下に起因する.尿道抵抗低下を引き起こす病態として尿道過可動性と内因性括約筋不全があり、前立腺手術では外尿道括約筋障害によってもSUIが生じる.理学療法分野において、前立腺手術後の尿失禁に対する理学療法の報告は少ない.そこで今回、当院で実施されている前立腺全摘出術後の尿失禁に対する理学療法の紹介と事例報告を行う.
【対象・方法】前立腺癌にて前立腺全摘除術を施行し、退院後もリハビリを継続した男性3名(67±5才).当院の前立腺全摘後理学療法は、術後1日目に離床・尿失禁に対するオリエンテーション実施.その後尿留置カテーテル抜去後の骨盤底筋トレーニング(以下、PFMT)開始.尿道過可動に対して肛門挙筋、尿道からの漏出を防止する球海綿体筋、腹腔内圧を調節するための腹横筋トレーニングを指導する.退院前には排尿日誌記録の指導、PFMTパンフレット説明と指導を行う.退院後は外来受診時にPFMT方法を確認、再指導を行う.今回は、術後理学療法と退院後のパッド使用枚数と、その重量の経時的変化について報告する.なお、本症例報告にあたり本学の個人情報保護の基本方針に従い取り扱った.
【結果】症例1:根治的前立腺全摘術後9日目退院、塩酸クレンブテロール投与歴あり(71日間)、術後60日目パッド3枚30g、術後90日目パッド1枚10g、術後238日目尿漏れ重量1g、術後350日目パッド不使用 症例2:根治的前立腺全摘術後17日目退院、手術後60日目パッド2枚70g、手術後90日目パッド2枚50g 症例3:前立腺悪性腫瘍手術後8日目退院、手術後60日目パッド1枚40g、手術後90日目パッド1枚10g 症例2、3は外来継続中のため詳細報告は発表時とする.
【考察】急性期は退院までの期間が短いため、一時的な排尿機能不全の状態を過ぎた後の退院後のトレーニングが重要となり、退院後の外来での継続も必要である.失禁がとまるまでは、排尿日誌を利用した賞賛や尿漏れ重量の減少についてフィードバックし患者教育を行う必要がある.理学療法士の関わりにより、適切なトレーニング方法の指導が行え、経過をフィードバックすることでトレーニング継続の支持ができる.術後合併症予防のための離床、機能性尿失禁予防を含む筋トレーニング、尿失禁に対して骨盤底筋群・腹横筋トレーニングの実施が前立腺全摘術後患者に提供できる.
【まとめ】前立腺全摘除後における尿失禁の骨盤底と腹腔内圧の問題に対してPFMTと腹横筋トレーニングを実施.退院時はPFMT資料、排尿日誌を配布し患者教育の一環とした.理学療法士が関わることによって尿失禁治療の一旦を担うものと示唆される.

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© 2009 日本理学療法士協会
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