理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-477
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骨・関節系理学療法
入谷式足底板・PNF下肢パターンを用いた上腕骨外側上顆炎に対する治療結果の報告
山田 裕司
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抄録

【はじめに】上腕骨外側上顆炎の治療として前腕部の筋力増強やストレッチングが挙げられるが、下肢からの展開を記した報告は少ない.しかしながら、人間は抗重力位で生活し、疼痛を誘発する肢位のほとんどが生活の中での坐位および立位であり、物を把持した動作時痛であることが多い.立位であれば足部からの運動連鎖も加味され、坐位であれば骨盤帯・体幹を中心としたいわゆるコアという観点からの治療展開も有効な手段と思える.今回は握力の変化とVASを指標として、入谷式足底板を用いた症例とPNF下肢パターンを用いた症例から若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】当院外来受診患者のうちに、他の部位に合併症がなく本研究の趣旨に同意を得て、上腕骨外側上顆炎と診断された5例、5肘を対象とした.男性2名、女性3名でいずれも40~50歳代だった.まず、治療前後に被験者に立位姿勢で上肢自然下垂位にて手関節機能的肢位で握力計を用い握力とその時生じる痛みをVASにて評価した.歩行時つまり上肢の振りだけでも疼痛が出現するものに対しては入谷式足底板を試み、歩行時痛がないものに対してはPNF下肢パターンを試みた.入谷式足底板の効果判定は市販の中敷で何も加工が施されていない靴でトレッドミルにて時速4.5kmで10分間歩行後、握力を計測し、その後中敷を筆者が作成した入谷式足底板に変え先と同条件でトレッドミルにて歩行した後、握力計にて測定した.それを症例1とする.また歩行時痛のないものに対して、PNFテクニックの下肢伸展・外転・内旋パターンを腹臥位にて行い、握力計にて測定した.それらを症例2~5とする.治療前後の握力とVAS変化をt-検定とWilcoxsonの順位和検定にてそれぞれ行い5%をもって有意とした.
【結果】5例中5例において治療前後に握力は改善を示し、VASは低下を示しいずれも有意差が認められた.
【考察】今回経験した症例らの歩行を観察すると5例とも罹患側の上肢の振りが健側に比べ減少しており、肩甲帯の緊張状態が続いていると考えられ、その緊張状態が筋連結を介して本疾患の発症に少なからず影響していると思われる.そこで、上肢の振りをスムーズに振り出すように誘導することが肩甲帯の弛緩を促せると考え、そのためには罹患側である側の下肢のうえにしっかりと体重が乗ることが必要であると考えた.そのように誘導できた際に反体側の下肢が前方に踏み出せ、その結果罹患部位の上肢がスムーズに振り出せるものと考えている.マイネルによると緊張の後に弛緩が促され、しっかりと下肢に体重が乗らないと緊張は起きないし、その後の弛緩も起きないと述べている.これは運動連鎖という観点から下肢のみではなく上肢にもいえ、罹患部位の上肢をスムーズに振り出せるためには下肢機能の向上も必要であり、本疾患の治療方法のひとつとして提案したい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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