理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 378
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内部障害系理学療法
OPCABとCABGの手術後ADL獲得および心肺運動負荷試験結果の比較
高橋 哲也設楽 達則多賀谷 晴恵熊丸 めぐみ田屋 雅信風間 寛子西川 淳一金子 達夫安達 仁大島 茂谷口 興一
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抄録

【はじめに】現在、本邦では胸骨正中切開下に人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術(off pump CABG:OPCAB)が増加してきている。OPCABでは、人工心肺の悪影響(全身性の炎症反応、粥腫や空気塞栓による脳合併症、虚血再灌流障害など)を避けることができるため、手術後の合併症も少なく、入院期間の短縮するとの報告が多い。しかし、その一方で、低肺機能、高齢者、肝・腎障害、脳血管障害などの人工心肺不適症例や、上行大動脈の石灰化や内膜肥厚が著しく大動脈遮断が危険な症例、心筋梗塞急性期など不安定な血行動態の場合など手術のリスクが高い場合にもOPCABは行われる。本研究では、人工心肺を使用した冠動脈バイパス術(CABG)後とOPCAB後のADL獲得および心肺運動負荷の各指標を比較した。
【対象と方法】対象は2006年から2007年にかけて冠動脈バイパス術を待機的に受けた患者129例とした。対象者をCABG群94例とOPCAB群35例に分けた。各群の年齢、手術前の左室駆出分画(LVEF)、手術後病棟内歩行自立までの期間、心肺運動負荷の各指標などを後方視的に比較検討した。
【結果】年齢とLVEFに両群間で差が認められた(年齢:CABG群60.1±8.8 歳、OPCAB群67.9±7.5歳、p<0.05.LVEF:CABG群57.5±14.6%、OPCAB群63.8±11.3%、p<0.05)。一方、手術後病棟内歩行自立までの期間はCABG群8.3±3.8日、OPCAB群7.8±3.1日、手術から退院までの日数はCABG群22.0±7.5日、OPCAB群19.9±6.3日と両群間に差を認めなかった。また、手術後初回心肺運動負荷試験の結果は、嫌気性代謝閾値はCABG群11.0±2.0ml/kg/min、OPCAB群11.2±1.8ml/kg/min、最高酸素摂取量はCABG群14.7±5.7ml/kg/min、OPCAB群14.3±3.4ml/kg/min、VE vs. VCO2 slopeはCABG群37.7±8.7、OPCAB群37.0±9.3、最高酸素脈ではCABG群7.3±1.7、OPCAB群7.5±2.4、?儼O2/?儻RではCABG群7.2±1.6、OPCAB群7.4±2.0とこれらすべての項目で、CABG群とOPCAB群に差を認めなかった。
【考察とまとめ】今回の結果は、これまでの報告(OPCABの方がリハビリテーションの進行が早い、または、手術後初回の運動負荷試験の期間が短縮され、入院期間が短いにもかかわらず退院時の運動耐用能が良好であった)とは異なっていた。OPCABは高齢者や中程度以上のリスクを有する患者にも行われるため、全てのOPCAB症例が手術後順調にリハビリテーションが進行したり、運動耐容能が高いとは限らない。冠動脈バイパス術後のリハビリテーションは術式によらず個々の症例のリスクや運動耐容能を加味したプログラム作成が必要である。

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© 2008 日本理学療法士協会
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