理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1454
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骨・関節系理学療法
学童期の外反母趾発生に関与する足部形態因子の検討
尾田 敦上村 豊麻生 千華子伊良皆 友香成田 大一
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キーワード: 学童期, 外反母趾, 足部形態
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抄録

【はじめに】外反母趾の発生率は女性が男性の約10倍で,ハイヒール靴の影響とされるが,近年ではハイヒールを履いたことのない小中学生の発生が増加し,中学生では女子の4人に1人,男子の7人に1人が外反母趾との報告がある。学童期の外反母趾には,靴以外に成長期特有の足部形態やアライメントの影響が推測されるが不明な点が多い。そこで本研究では,小学生を対象とした外反母趾の実態を調査し,足部形態因子の影響を検討した。
【対象と方法】市内の某小学校(全校生徒614名)において,あらかじめ保護者から同意を得た1~6年生までの218名(男子112名,女子106名)を対象とした足部形態・アライメントの調査を行った。足部形態の評価は,Pedoscope上自然立位で撮影した画像から,足長・足幅,外反母趾角(第1趾側角度),内反小趾角(第5趾側角度)を計測し,外反母趾角13゜以上を外反母趾群とした。また,足底接地状況は,野田式分類とともに接地面積を求めて接地率を算出した。アーチ高の評価にはアーチ高率を用いた。さらに,踵骨長軸と下腿長軸のマーキング後,足位をneutralとして踵部後方から撮影した画像を用いてLeg heel angle (LHA)と踵骨外反傾斜角(FHA)を計測した。統計処理は,SPSS 11.0Jを用いχ二乗検定及び外反母趾角を従属変数としたStepwise法による重回帰分析を行い,外反母趾に関与する因子の抽出を行った。説明変数には,多重共線性を考慮して学年,性別,BMI,足示数(足幅/足長),LHA,FHA,アーチ高率,接地率,野田式分類,内反小趾角の各因子を用いた。
【結果】対象者の両足436足の外反母趾角の平均は10.4±5.3゜で,外反母趾群は,1年9足(13.6%),2年12足(20.7%),3年31足(27.2%),4年24足(30.8%),5年25足(41.7%),6年27足(45.0%)と学年進行に伴い有意に増加し(p<0.01),全体では128足(29.4%)であった。扁平型footprintの数は外反母趾群で41足32.0%を占め,非外反母趾群62足20.1%に比べて有意に多かった(p<0.01)。重回帰分析により抽出された変数(標準偏回帰係数)は,学年(0.308),アーチ高率(-0.145),接地率(0.139),性別(0.115)の4因子で,重相関係数はR=0.389(p<0.01)であった。
【考察】学童期の外反母趾は学年の進行に伴って増加し,アーチ高率が低く接地率の大きい扁平足ほど母趾の外反が強いことを示している。一般に外反母趾は横アーチの低下した開張足が主な原因とされ,扁平足は二次的なものと考えられている。本調査ではその指標として足示数を用いたが,成長に伴う足のプロポーション変化は顕著ではなく,重回帰分析では有意な因子として抽出されなかった。また,アーチが未形成で,土踏まず部分の接地面の広い扁平型footprintに外反母趾が多いことから,学童期における外反母趾の発生には,アーチ形成の遅れが最も重要な要因であることが示唆され,正しい靴の選択により,アーチ形成を促進していくことの重要性が推察された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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