理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 520
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骨・関節系理学療法
膝前十字靭帯再建術後の筋力回復と膝関節アライメントとの関係性について
経時的変化に着目して
金子 雅明筒井 稔久市川 毅大島 基紀北川 和彦南谷 晶三谷 玄弥柿崎 藤泰
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抄録

【目的】膝前十字靭帯(以下ACL)再建術の再建材料として多く用いられているのは、半腱様筋腱(以下ST)、STと薄筋腱(以下G)である。このSTとGは膝関節屈曲・下腿内旋作用の約20%に関与しているため、腱採取により膝関節深屈曲位の筋力低下や下腿外旋傾向などの影響がある。そこで我々は、術前・術後3・6・9・12ヶ月の膝関節等速性筋力を経時的に調査し、各測定時期間で最大トルクを体重で除した値(以下体重比トルク値)の増減を比較した結果、内旋筋力は屈曲・外旋筋力に遅れ6ヶ月と9ヶ月の間に有意な増加があると報告した。今回は、ACL再建術後の膝関節等速性筋力と膝関節アライメントとの関係を経時的に調査したので報告する。
【方法】対象は、付属大磯病院にてACL再建術(ST、ST-G法)を施行した6名(男性2名、女性4名)で平均年齢は29±13歳、平均体重62±9.4kgであった。各対象者に測定の主旨を十分説明し同意を得た。術後トレーニングはACLプログラムに準じて施行した。等速性筋力測定はCYBEX770を使用し、患側の膝関節屈曲・伸展・内旋・外旋筋力を角速度60deg/secで測定し、体重比トルク値を算出した。膝関節アライメントは、立位Q-angle、下腿外旋角度とした。立位Q-angleは安静立位にて上前腸骨棘から膝蓋骨中央を結ぶ延長線と、膝蓋骨中央から脛骨粗面を結ぶ線のなす角を計測した。下腿外旋角度は、腹臥位にて股関節屈曲・内転・内旋0°足関節背屈0°膝関節屈曲90°に保持し、大腿骨軸と足関節内外顆を結ぶ線のなす角を計測した。これらの測定は術後3・6・9・12ヶ月で施行し、各測定時期間で比較した。統計処理はWilcoxon符号付順位検定を使用した(p<0.05)。
【結果】膝関節屈曲・伸展・内旋・外旋筋力は、術後3ヶ月に比べ12ヶ月時点で有意に体重比トルク値が増加し、各測定時期間による体重比トルク値の増減比較では、伸展3ヶ月と6ヶ月、内旋6ヶ月と9ヶ月の間に有意な増加を認めた(p<0.05)。膝関節アライメントは、立位Q-angle の術後3ヶ月に比べ12ヶ月時点で有意に角度が減少し、各測定時期間による角度の増減比較では6ヶ月と9ヶ月の間に有意な減少を認めた (p<0.05)。
【考察】静的な立位Q-angleと膝関節内旋・外旋筋力には相関があるという一般的な見解はない。しかし今回の調査から、術後6ヶ月と9ヶ月の間に有意な内旋筋力の増加と立位Q-angleの減少がみられた。この要因として、腱採取により膝関節内旋・外旋筋群間の筋力比に崩れが生じ下腿外旋傾向を示すが、残存する膝関節内旋筋群の代償機能が向上することで筋力比が改善し、下腿を内旋方向に変化させ立位Q-angleの減少に至ったと示唆される。このため膝関節内旋筋トレーニングを早期から行うことで、膝関節内旋・外旋筋群間の筋力比を調整することができると考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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