理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 376
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生活環境支援系理学療法
片手で着用可能なhip protectorの開発
*佐々木 久登村田 浩子田中 瑛子
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抄録

【目的】後期高齢者の増加に伴い転倒による大腿骨頚部骨折の急増が社会問題化している.この問題を解決する方法の一つとしてヒッププロテクターが開発されているが,その効果については賛否が分かれている.既存のヒッププロテクターは内装型(下着形式)であるため,トイレ動作時の困難などから装着率は良くない.我々はこの欠点を解決するため外装型のヒッププロテクターに使用可能な素材の検証を第40回本学会で発表した.今回は,その素材を利用して片麻痺患者にも使用可能なヒッププロテクターを作成したので発表する.

【方法】ダンボールを素材とした衝撃吸収材を利用して外装型ヒッププロテクター(エプロンタイプ)を試作し,既存の内装型ヒッププロテクターとその装着感などを比較した.試作品の使用目的を説明し同意の得られた27名の老人保健施設利用者に試作品を1週間使用していただいた後に本人と,その介護職員にアンケート調査を行った.施設利用者の内訳は男性8名(平均年齢75.8才),女性19名(平均年齢78.5才)で,疾患別では脳卒中12名,変形性関節症 3名,骨折・パーキンソン病・リウマチ・糖尿病がそれぞれ2名,その他の疾患が4名である.介護職員の勤続年数は平均5.8年であった.

【結果と考察】アンケートの結果は,デザインに関しては非常に良い 9名,良い 9名,普通 6名 悪い 3名であった.悪いと答えた3名はその理由として年寄りくさい,色が暗いなどと答えていた.着脱のしやすさに関しては良い 6名,普通 8名,悪い 12名,非常に悪い 1名であった.このことは上肢機能に障害のある者に対する配慮の必要性を痛感させられた.装着感に関しては非常に良い6名,良い10名,普通11名であり,悪いと答えたものは皆無であった.「内装型ヒッププロテクターと比較して違和感がまったくない」と答えた者もおり装具としてより衣服として着用されたと考えられる.内装型ヒッププロテクターではトイレ動作時の着脱が困難であるが外装型ヒッププロテクターではトイレ動作時にヒッププロテクターをはずさなかった者は21名,はずした者は6名であった.はずした6名は「習慣だから」「邪魔だから」と答えており外装型ヒッププロテクターの目的は達成されたと考える.しかし,今後,本試作品を使用したいと思いますかとの問いには,是非使用したい 2名,使用しても良い 8名,どちらとも言えない 7名,できたら使用したくない 9名,使用しない 1名と半数近くが使用を拒否していた.介護者も試作品の骨折予防効果は認めるものの製品としての推奨には消極的な意見が多かった.拒否した多くが脳卒中患者やリウマチ患者であり片手で着脱可能なヒッププロテクターの必要性を痛感させられた.

【まとめ】アンケートの結果を踏まえて片手で着脱可能なヒッププロテクターを作成したので供覧する.

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© 2007 日本理学療法士協会
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