理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 955
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骨・関節系理学療法
変形性股関節症を対象にした水中運動療法に対する工夫
*相馬 光一森井 和枝
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抄録

【はじめに】近年、運動療法を施行する上で環境適応の重要性が認識され、さまざまなアプローチがなされている。水中運動においても同様に、環境に適応するための水慣れが重要である。当院では変形性股関節症の術後にプールを用いて、運動療法を施行している。人工股関節全置換術(以下THA)を受ける症例は、高齢者が多く、水中運動を行なった経験がない症例もいる。さらに術後の動きにくさも加わり、水中でうまく動けない症例を経験することも多い。今回、水中という特異な環境において運動療法を進めていく上で環境適応を容易にするための工夫を行なった。その結果をアンケート調査によりまとめ考察を加えて報告する。
【対象】本研究の趣旨を理解し同意が得られたTHA後の症例20名(うち再置換3名)を対象とした。全例女性で平均年齢は64.3±8.3歳。平均身長は149.7±3.0cmであった。
【方法】市販のリストバンドを両足首に装着し水中運動を行ない、装着前後にアンケート調査を行った。プールの水深は110cm。評価は術後のプール開始から3ないし4日後に実施した(1/3PWB時期)。評価内容は水慣れ、装着感、浮遊感、歩きやすさ、下肢運動のわかりやすさ、継続使用希望の6項目とした。
【結果】水慣れに関しては、装着前に水中運動がやや怖いという回答が3名みられた。その他の17名は特に不安感の訴えはなかった。装着感は良い18名、やや良い・変わらない各1名であった。浮遊感は装着前でとても強く感じる・感じる14名であったが、装着後は4名に減少した。歩きやすさは装着後が歩きやすくなった10名、やや歩きやすくなった6名、変わらない4名であった。足が床にしっかりついた感じがして、安心して歩けるという意見があった。下肢運動のわかりやすさは、わかりやすくなった12名、ややわかりやすくなった5名、変わらない3名であった。わかるというより意識が向く、意識しやすいという意見が多かった。継続使用の希望ありが15名、どちらでも良いが5名であった。
【考察】水中での運動療法を有効に行なうためには水慣れが重要である。リストバンドを足関節部に装着することによって半数以上が歩きやすくなり、継続して使用したいとの回答を得た。水中では浮力などの影響により陸上とは異なったバランスが要求され、足底圧や下肢の重さの減少により体性感覚からの情報量が減少することが考えられる。リストバンドを足関節部に装着することにより、装着部の圧迫刺激と水分を含むことによる重量や運動時の抵抗刺激を増すことが可能となり、末梢からの情報量が増大し、動きのフィードバックがしやすくなったと考える。
【まとめ】THA後の症例を対象に、両側の足関節部にリストバンドを装着し水中運動を施行した。アンケート調査より、水中運動での安心感が増し、運動性を引き出し易いという結果が認められた。水中運動療法におけるリストバンドの使用は有用と考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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