理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1048
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生活環境支援系理学療法
虚弱高齢者に対するマシントレーニングの効果
*井口 茂松尾 志織江口 真由美松山  千草當麻  俊久川副  巧成北村  雅志真崎 美都子大久保 智子陣野 紀代美松坂  誠應
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抄録

【目的】高齢者の運動機能向上を目的としたアプローチは,身体機能の評価に基づき,地域での運動教室や教育指導,ホームプログラムの指導等がある.これらは参加者の運動習慣の確立が重要であり,長期的フォローが必要とされている.また,運動プログラムの内容は漸増抵抗運動や筋力とバランスを含む機能的トレーニング,太極拳等が実践され,その効果も検討されている.本研究では虚弱高齢者に対するマシントレーニングの効果を検討するものである.
【方法】対象は通所サービスを利用している65歳以上の在宅高齢者とした.対象者の条件は寝たきり度JランクからAランク,痴呆自立度正常からIとし,過去2ヶ月間に2週以上の定期的な筋力強化及びバランス運動等を行っている者は除外した.対象の選定は2003年11月~2004年9月の期間で本研究に同意を得た者を介入群及び対照群に登録した.対象者数は無作為化対照試験に準じ68名以上としその結果,介入群89名,対照群87名の登録を得た.比較対象は年齢を考慮し対照群より15例を無作為に削除し,介入群89名,対照群72名を比較対象とした.実施したマシントレーニングは下肢筋の強化を目的にHUR社製及びCompass社製各々3機種を使用した.運動頻度は週2回,3ヶ月間,運動回数10回/setの3set,計30回とした.負荷量はボルグ指数を用い各機器の運動を10回行い,「楽に感じる」負荷量を求め,運動開始2週目以降は「ややきつい」負荷量で実施した.評価項目は転倒に関する評価とADL,心理的評価、体力評価を行った.転倒に関する評価は転倒回数,転倒リスクを調査し,ADLはFIMと老研式活動能力指標を用い,心理的評価はFESとGDS-15を用いた。体力評価は握力,開眼片足立ち,FR-T,椅子起立時間,TUG,6m歩行を実施した.統計手法は両群間の比較を対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を用い,さらに同一群における初回時と3ヶ月後の比較を対応のあるt検定またはwilcoxonの順位和検定を用いた.
【結果】リタイアは介入群11名,対照群12名で,それらを除く3ヶ月後の介入群(n=78)と対照群(n=60)の比較は転倒回数と転倒リスクで有意差が認められ,介入群で改善がみられた.GDS-15では対照群が有意に改善していた.体力評価では,椅子起立時間で介入群が有意に改善した.各群の介入前後の比較では,介入群で転倒回数と転倒リスクの有意な減少がみられ,左握力と椅子起立時間,TUGで有意な改善がみられた.対照群では3ヶ月後に転倒回数は有意に減少したが,転倒リスクは増加した.またGDS-15で有意な改善がみられ,体力評価のFR-Tは低下した.
【考察】今回の結果からマシントレーニングは,虚弱高齢者に対する短期的,集中的なプログラムであり包括的プログラムとの併用により転倒予防の有効な方法に成り得ることが示された.

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© 2006 日本理学療法士協会
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