理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 530
会議情報

内部障害系理学療法
吸気筋トレーニングが横隔膜運動に与える影響
Dynamic MRIを用いた横隔膜運動解析による検討
*冨田 和秀居村 茂幸阪井 康友門間 正彦大瀬 寛高江口 勝彦設楽 達則山田 亮祐赤池 優八高 拓也
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【研究目的】呼吸理学療法の基本手技の一つに吸気筋トレーニング(以下,IMT)がある。吸気筋力の評価は四肢筋の場合と違い,直接その筋力を測定することが困難であるため,呼吸運動により胸腔や口腔で発生する陰圧の最大値を吸気筋力の指標としている。しかし最大吸気口腔内圧を吸気筋力とした場合,吸気筋である横隔膜や外肋間筋だけでなく,強制吸気として働く大胸筋,斜角筋,胸鎖乳頭筋,腹筋などの関与を含めた総体的に発生した圧となるため,主要な吸気筋である横隔膜単独の変化については判定できない。IMTにより最大吸気口腔内圧の増大が見込めることは確かであるが,IMTが横隔膜運動にどの程度影響を及ぼすかは不明である。
 本研究の目的はDynamic MRIを用い,IMT実施前後での横隔膜運動の変化を比較し,IMTが横隔膜運動にどのような影響を及ぼしているかを解明することである。
【対象と方法】対象は健常男性2名(対象1:21歳 BMI21.3,対象2:23歳 BMI19.4)。実験方法は対象者に対し,THRESHOLD IMTを用いて,週に3回,1日1回の頻度で,1回15分間のIMTを6週間継続させ,IMT前,6週間のIMT後に,それぞれの吸気筋力とDynamic MRIによる横隔膜運動の評価を行った。
 Dynamic MRIの評価は,MRI装置(Philips社Gyroscan ACS-NT Power Track 3000)を用い,30秒間最大深呼吸を実施させ,その間の横隔膜運動を0.5秒間隔で撮像した。撮像部位は右横隔膜とし,気管支分岐を通る冠状面スライスを選択した。撮像にはfast spin echo法におけるT2強調画像をrepetition time 480msec,echo time 40msecにより撮像した。横隔膜運動の解析方法は,画像解析ソフト(Scion社製Scion Image)を用い,呼気位と吸気位のそれぞれの移動距離を求め,それらを横隔膜の運動距離として,比較の上検討を加えた。
 吸気筋力は呼吸圧測定器(Micro Medical社製 Micro MPH, UK)を用い,椅座位で残気量位から最大吸気を行わせ,その時の最大吸気圧を測定した。
【結果】吸気筋力はIMT前で,対象1:96cmH2O,対象2:112cmH2Oであったが,IMT後には対象1:135cmH2Oと著明な増加傾向を示し,対象2:118cmH2Oと僅かな増加であった。
横隔膜運動はIMT前で対象1:60mm,対象2:69mmであったが,IMT後には対象1:60mmと変化なく,対象2:77mmと増加傾向となった。
【考察】本実験では,吸気筋力と横隔膜運動には顕著な相関関係は認められなかった。これは吸気筋力の増大は横隔膜運動の増大の如何に左右されるのではなく,横隔膜運動の急峻な変化などの他の要因が関与している可能性があることが考えられた。








著者関連情報
© 2006 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top