理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 505
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内部障害系理学療法
要介護者の肢位強度法による身体活動量と体組成
*野口 雅弘木村 朗吉川 卓司大城 昌平水池 千尋重森 健太柴 友紀子星加 一郎
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抄録

【目的】今後の介護予防に向けたリハビリテーションの一環として、維持期のリハビリテーションにおいては運動機能の維持・改善に向けたプログラムのみならず、高齢者の健康管理というのは重要な課題である。その健康管理において身体活動量の管理は重要性が増すと思われる。本研究の目的は非侵襲な検査手段として簡便に体組成を測定する装置を利用し、体脂肪量や筋量と肢位強度法による身体活動量(以下PIPA)の関係を明らかにすることであった。そこで本研究ではPIPAと体組成間での回帰分析を行い、関係を調べた。
【対象および方法】対象者は介護老人保健施設に入所中の高齢者7名(女7名平均年齢81.8±7.8歳、平均身長144.6±5.3cm、平均体重43.2±7.4kg)をランダムに選択し、本人の同意を得た。介護度は介護度2が2名、3が3名、4が1名、疾患は脳血管障害、大腿骨頸部骨折、認知症などであった。方法は一日の身体活動量を、本人と介護スタッフから問診し、PIPAから推定した。体組成はオムロン社製体重体組成計HBF-358にて、基礎代謝量、BMI、体脂肪率、骨格筋率を測定した。分析はPIPAを独立変数として体組成を従属変数とした回帰分析を行い線型関係の有無を調べた。
【結果】全体の平均値はPIPAは927±125.8kcal、基礎代謝量は1010.6±110.8kcal、BMIは20.6±3.1、体脂肪率は32.8±3.8%、骨格筋率は21.4±1.4%、であった。全体的にBMIは20前後でも体脂肪率は30%前後の高値を示し、骨格筋率は20%前後の低値を示す傾向が見られた。PIPAに対する回帰式の標準化係数は、基礎代謝量が0.958、P=0.010、骨格筋率が0.231、P=0.709、体脂肪率が0.613、P=0.196であった。回帰直線はPIPAと基礎代謝量の間で有意な直線回帰関係を示したが、PIPAと体脂肪率、骨格筋率との間では同関係を示さなかった。
【考察】PIPAと基礎代謝量で直線関係が認められたことはPIPAが代謝量の測定を目的としていることから、一定の妥当性を持つことを示したものと考えられる。体脂肪量は身体活動量との関係において、青年集団では、PIPAと体脂肪量は負の回帰を示すと考えられるが、高齢者では一定の体脂肪量を蓄える能力自体が身体活動量を高めるかも知れない。また、骨格筋量との関係が認められなかった理由としては、対象者の疾患が多岐にわたり、必ずしも体幹や四肢の筋力を必要とする動作様式で姿勢を保持していなかった可能性が考えられる。
【結論】本研究ではPIPAと体脂肪率、基礎代謝量、骨格筋率との関係を検証する目的で、回帰分析を行った。その結果、回帰直線はPIPAと基礎代謝量の間で有意な直線関係を示した。PIPAと体脂肪量、骨格筋率との間では回帰関係を示さなかった。基礎疾患によっては身体活動量を構成する姿勢の保持、変換において筋活動を伴わない可能性も考えられるため、代謝機能と運動機能についてバランスをとったプログラムを行う必要があるものと考えられた。

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© 2006 日本理学療法士協会
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