理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 847
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理学療法基礎系
錐体筋の形態形成について
*時田 幸之輔深澤 幹典Shyama Banneheka鈴木 了宮脇 誠熊木 克治
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抄録

【はじめに】これまで我々は錐体筋支配神経の起始分節, 経路, 分布の多様性について報告してきた. 今回, 二重神経支配の錐体筋に遭遇した. さらに錐体筋支配神経と腹壁を構成する筋の支配神経との関係を観察し, 錐体筋の由来について考察した.【対象と方法】(1)平成17年度新潟大学マクロ解剖夏期セミナーにおいて二重神経支配の錐体筋に遭遇し肉眼解剖学的に観察した. また, (2)平成16年度新潟大学医学部解剖学実習解剖体のうち4側について拡大鏡下で錐体筋支配神経の分岐様式を観察した.【結果】(1)二重神経支配について: 10体中3体3側に出現. (H.14からH.16までの観察を含めると3側/81側). 3例のうち1例について詳しく報告する. 2本の錐体筋支配神経のうち一方の起始分節はTh12である. この神経は外側皮枝を分枝した後, 側腹壁に入り, 終始側腹壁の内腹斜筋と腹横筋の間(2-3層間)を走行し, 腹直筋鞘に入る. 腹直筋鞘内で腹直筋の小部分を貫き肋間神経前皮枝(Rca)を分枝する. このRcaは標準的なRca(Rcap)と腹直筋との位置関係が異なるので, 移行型Rca(Rcat)と称する. 錐体筋枝はこのRcatが腹直筋鞘の小部分を貫いた後にRcatより分岐する. 分岐した筋枝は錐体筋の裏面より筋に進入する. もう一方の支配神経の起始分節はL1である. この神経は外側皮枝を分枝した後, 側腹壁に入り側腹壁の2-3層間を走行する. 上前腸骨棘の上方の腹壁で上枝, 中枝, 下枝の3枝に分岐する. これら3枝は上前腸骨棘の上内方の腹壁でそれぞれ内腹斜筋を貫き, 外腹斜筋と内腹斜筋の間(1-2層間)へ移行する. 上枝はそのまま1-2層間を走行し, 外腹斜筋腱膜を貫く浅い前皮枝(Rcas)となる. 中枝は錐体筋枝となるが, 1-2層間を走行した後, 錐体筋の表面より筋に進入する. 下枝は1-2層間を走行し, 鼠径管に入り, 浅鼠径輪を通り, 外陰部へ向かう前皮枝(腸骨鼠径神経, Ii)となる. 以上よりこの例では, 二重支配の錐体筋の一方の神経は腹直筋鞘に入るRcatからの枝であり, 他方は腹直筋鞘に入らないRcas(またはIi)からの枝と言える. 他の2例についても一方はRcatからの枝が裏面から入り, 他方は腹直筋鞘に入らないIiまたは陰部大腿神経の陰部枝(Rg)からの枝が表面からはいる. (2)錐体筋支配神経と他の腹筋群支配神経との関係: 錐体筋枝を分枝するRcatは他に腹横筋, 内腹斜筋, 腹直筋へ筋枝を出す. 特に腹直筋枝とは共同幹をなしている. 一方錐体筋を支配するRcas, Ii, Rgは腹横筋, 内腹斜筋へ枝を出すが, 腹直筋には枝を出さない. さらに最終的に神経本幹から錐体筋枝と内腹斜筋枝に分かれるという意味では, この錐体筋枝は内腹斜筋枝と共同幹を形成していると言える.【考察】以上よりRcatに支配される錐体筋とRcas,Ii,Rgに支配される錐体筋の間で筋原基が異なり, 前者は腹直筋と同じ直筋系, 後者は内腹斜筋と同じ固有内斜筋系と推察できる. 二重神経支配の錐体筋はこの両者が合したものと考えることができる.

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© 2006 日本理学療法士協会
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