理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 733
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理学療法基礎系
膝立ち位における筋活動の特性
立位・骨盤傾斜との比較
*中村 香織中村 高良木下 一雄佐藤 信一安保 雅博宮野 佐年
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抄録

【はじめに】膝立ち位は立位と比べ身体重心が低く、膝・足関節の影響を除外し、選択的に股関節伸展を促通するために有益な姿勢として臨床において多用されている。しかし、膝立ち位で股関節周囲筋を有効に用いる方法についての具体的な報告はない。今回、膝立ち位における股関節周囲筋を有効に働かせる訓練方法を見出すため、膝立ち位における筋活動の特性を姿勢と骨盤傾斜の両要因にて比較した。
【対象および方法】対象は下肢、体幹に障害等の既往のない健常者30名(男性12名、女性18名、平均年齢23.7±2.6歳)とした。測定条件は立位と膝立ち位での姿勢による比較、膝立ち位で骨盤前傾位と骨盤後傾位での骨盤傾斜による比較とした。骨盤傾斜において体幹の前後屈や痛みを伴わない位置を確認し、自動運動にて骨盤を傾斜し保持させた。測定は表面筋電図機器(日本光電社製)を使用し、皿電極を2cm間隔で貼付し表面筋電図を導出した。被検筋は、脊柱起立筋、腹直筋、大殿筋、中殿筋、大腿直筋、半腱様筋とした。また、体表にマーカーを貼付し、デジタルビデオカメラにて姿勢観察を行った。測定回数は各肢位をランダムな順序にて1回ずつ各20秒間測定し、得られた生筋電をサンプリング周波数1000HzにてA/D変換したのち、全波整流化し筋積分値(IEMG)を求めた。データ処理は各筋のIEMGを3秒間ずつ3標本抽出し、平均値を算出した。また、Danielsらの肢位にて各筋における5秒間の最大随意等尺性収縮時のIEMGを測定し、安定した3秒間のIEMGとの比較により各筋の相対的IEMG(%IEMG)を求めた。それらを姿勢と骨盤傾斜の両要因における各筋の%IEMGとして、対応のあるT検定を用いて比較した。
【結果】姿勢の違いによる比較では、膝立ち位において脊柱起立筋、腹直筋、大殿筋、半腱様筋で立位より%IEMGが有意に高くなった(p<0.05)。また、骨盤傾斜による比較では、骨盤前傾位の脊柱起立筋と骨盤後傾位での大殿筋の%IEMGが有意に高くなった(p<0.05)。
【考察】膝立ち位は立位と比べ身体重心が前方に位置するため、大殿筋と脊柱起立筋の筋活動が高くなり、さらに骨盤後傾位において努力性の筋収縮を伴うため大殿筋の筋活動が高くなるのではないかと予測した。結果より、予測と同じような筋活動の特性を得ることができ、膝立ち位は立位よりも多くの筋活動を要し、骨盤後傾位で姿勢保持させた方がより大殿筋の筋活動を高めやすい姿勢であることが示唆された。一方で被検者の姿勢保持方法に個人差が大きく、筋活動パターンを分類化することは難しかった。今後はこれらの特性を生かし、膝立ち位における股関節周囲筋促通の有効な訓練方法へつなげていくため、腰椎・骨盤の可動性や身体重心位置の影響も含めて検討していきたい。

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© 2006 日本理学療法士協会
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