理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 930
会議情報

骨・関節系理学療法
入院女性精神疾患患者の骨評価
*山下 久実細井 匠武田 秀和牧野 英一郎藤原 康紀玉木 裕子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】精神科病棟において長期入院,高齢化の背景から,入院精神疾患患者の転倒発生事故が増えることが予測される.我々は,第38回本学術大会において女性閉鎖病棟入院者の転倒が多いことを報告した.そこで,今回は入院女性精神疾患患者の骨評価を行い,身体特性及び理学療法実施状況との関連について検討した.
【対象】当院精神科に入院中の女性患者42名(開放16名;平均年齢63.9歳,身長148.4cm,体重50.8kg,平均BMI23.0kg/m2,平均入院期間4165.5日.閉鎖26名;平均年齢65.8歳,身長150.4cm,体重49.5kg,平均BMI21.8kg/m2,平均入院期間5530.6日).対象者は,2003年9月現在歩行が可能で,骨評価の主旨を理解し同意が得られた者である.
【方法】超音波骨評価装置AOS-100(ALOKA社製)を用い右踵骨の若年骨評価値(YAM),音響的骨評価値(OSI)を求めた.対象者を開放病棟(以下開放群)と閉鎖病棟(以下閉鎖群)の2群に分け,OSIと年齢,BMI,体脂肪,入院期間,抗精神病薬処方量(chlorpromazine換算)について比較した.さらにOSIと理学療法実施状況との検討を行った.
【結果及び考察】骨粗鬆症予防マニュアル診断基準YAM80%未満(要精査)の者は,開放群が5名(31.3%),閉鎖群が21名(80.8%)であり,閉鎖群のYAMは有意に低かった(p<0.05).開放群,閉鎖群におけるOSIとそれぞれの項目との相関関係を求めると,年齢はr=-0.73,r=-0.48であった.BMIと体脂肪は開放群では r=0.41, r=0.48であり,閉鎖群ではr=0.26,r=0.21であった.入院期間,抗精神病薬処方量とOSIには両群とも相関関係は認められなかった.
次に開放群,閉鎖群について理学療法実施状況からOSIをみる.開放群の積極的な理学療法実施者9例ではOSIの平均が2.344,それ以外の7例は2.126であり有意な差は認められなかった.閉鎖群の実施者11例ではOSI2.055,それ以外の15例は1.968で,実施者のOSIが高い傾向にあった.開放,閉鎖群合わせてみると,積極的な理学療法実施者20例のOSIは有意に高かった(p<0.05).
今回の評価から精神科に入院している女性患者,特に閉鎖病棟では骨粗鬆症のリスクが高く,骨折する可能性が高いことが示唆された.一方,閉鎖病棟において理学療法を積極的に介入している者はOSIが高く,転倒,骨折の予防的な役割を果たしていると思われた.
【まとめ】入院女性精神疾患患者42名の超音波骨評価を行い,身体特性及び理学療法実施状況との関連について検討した.閉鎖病棟の骨粗鬆症のリスクが8割以上であったが,積極的な理学療法実施者はそれ以外のものに比べOSIが高かった.

著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top