理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 36
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理学療法基礎系
高齢者における歩行能力の違いとBerg Balance Scale下位項目との関連について
*伊勢崎 嘉則杉本 諭小林 正宏丸谷 康平
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抄録

【目的】
 これまでにもBerg Balance Scale(以下BBS)は歩行能力を推定するための指標として有用であると報告されている。しかしながらこれらの報告は概してBBSの総合得点を利用しており、歩行能力の違いとBBS下位項目との関係について研究されたものは少ない。それぞれの歩行能力に対して、どのような下位項目の能力がどの程度必要であるのかを明らかにできれば、今後の歩行能力改善に対する理学療法を進めるための有用な指標となりうると考えられる。そこで今回我々は、BBS下位項目についてそれぞれの境界点を求め、歩行能力との関連について検討した。
【対象および方法】
 対象は老人保健施設に入所およびデイケアに通所している高齢者のうち、歩行を妨げるような著明な整形外科的疾患および中枢神経疾患を有さない86名である。性別は男性18名、女性68名、平均年齢は81.5±6.9歳であった。
 対象者の歩行能力をFIMの分類を参考に、50m歩行自立群、50m歩行修正自立群、15m歩行自立群の3群に分類し、BBS下位項目について群間比較した。分析方法としては、まず各項目について度数分布表を作成し、分布の散らばりと臨床的な意味合いを考慮して各下位項目のカテゴリー数を減少させたクロス表を作成し、歩行能力との関連についてKenndallのタウを用いて検討した。なお対象者全員に本研究の主旨を説明し、同意を得て実施した。
【結果および考察】
 50m歩行自立群は21名、50m歩行修正自立群は34名、15m歩行自立群は31名であった。BBS下位項目に対する3群の分布を基にして、「座位バランス」、「立ち上がり」、「立位から座位」、「床からの拾い上げ」では4点と3点、「トランスファー」、「立位保持」、「閉眼立位保持」、「閉脚立位保持」、「前方へのリーチ」、「1回転」では3点と2点、「立位での肩越しの振り向き」、「踏み台への足載せ」、「タンデム立位」、「片脚立位」は2点と1点の間を境界点としたクロス表を作成し、歩行能力との関連について独立性の検定を行った。  
 全症例での検討では、「座位バランス」、「閉眼立位保持」以外の項目に有意差が見られた。更に50m歩行自立群と50m歩行修正自立群および50m歩行修正自立群と15m歩行自立群の2群間で検討すると、50m歩行自立群と50m歩行修正自立群の比較では「閉脚立位保持」、「踏み台への足載せ」、50m歩行修正自立群と15m歩行自立群の比較では「トランスファー」、「立位保持」、「前方へのリーチ」、「床からの拾い上げ」、「片脚立位」において有意差が見られた。以上の結果より、各歩行能力に必要なBBS下位項目それぞれについての素点を選定が可能であり、歩行能力の向上を目指したアプローチを行なう際の指標になりうると考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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