ファルマシア
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ジェネリック医薬品の生物学的同等性を迅速予測
伊東 育己
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2022 年 58 巻 12 号 p. 1163

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抄録

2020年3月「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」が改正され,経口製剤に対し,溶出試験とヒトにおける生物学的同等性試験が必須となった.後発医薬品の開発においては添加物を自由に選択することができるが,生物学的同等性に影響する製剤の崩壊性や主薬の溶出性,膜透過性については各添加物の固有の性質とともに,主薬と添加物間の相互作用も考慮しなくてはならない.特に膜透過性は,in vivoにおける吸収率を予測する手がかりとなるが,開発段階において溶出試験は実施しても,膜透過性の測定・評価は行われてこなかった.そのため溶出性と膜透過性を同時に試験しようという多くの研究がなされ,in vivoおよびin vitroの研究を通じて,熱力学的溶解度と膜透過性に負の相関関係があることや,溶解性向上を目的とした界面活性剤等の添加が膜透過性に影響を与えることが報告されている.添加物として頻用される高分子は非晶質固体分散体(ASD)技術において,薬物を微粒子または分子の状態で分散させるための非晶質担体としても使用される.ASD技術が難溶性薬物の溶解性を向上する技術である一方で,高分子の添加が溶解性,つまり膜透過性に影響する可能性が報告されている.
そこで本稿では,ヒトにおける生物学的同等性試験を実施する前に,賦形剤が膜透過性に与える影響を製剤開発の全工程にわたって調査するAbsorption Driven Drug Formulation(ADDF)というコンセプトを打ち出したKadarらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Dahan A. et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 101, 99–107(2016).
2) Borbás E. et al., Mol. Pharm., 15, 3308–3317(2018).
3) Szabina Kádár. et al., The AAPS J., 24, 22(2022).

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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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