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自由エネルギー摂動法(FEP)を用いた阻害活性の高精度予測
三沢 憲佑
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2019 年 55 巻 5 号 p. 443

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抄録

医薬品開発において,手掛かりとなる化合物を基に,より高い活性を有する化合物を効率的に見いだすプロセスは重要なポイントである.これまでに結合自由エネルギー計算を行う手法の1種として,自由エネルギー摂動法free energy perturbation: FEPや熱力学的積分法などのアルケミカル的な手法が考案されてきた.これらの手法は,徐々にリガンドを変換しながらその中間状態を計算することで,構造的に類似したリガンド分子の結合自由エネルギー差を厳密に予測できる手法であるが,計算時間や精度の観点から,これまで産業界ではあまり活用が進んでいなかった.しかし近年,general-purpose computing on graphics processing units(GPGPU)などの計算資源による計算性能の飛躍的向上や,構造サンプリング技術の工夫,分子力場の精度改善などにより,FEPは多くの創薬プロジェクトにおいて,リガンド分子の相対活性を精度よく予測するツールとして重要な手法になりつつある.最近のFEPを用いた動向の一例として,Janssen社のグループが,共通の母核構造を有する脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)阻害剤に対する阻害活性予測能を報告したので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Saha A. et al., J. Chem. Theory Comput., 14, 5815-5822(2018).
2) Keith J. M. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 24, 1280-1284(2014).
3) Kuhn B. et al., J. Med. Chem., 60, 2485-2497(2017).
4) Lovering F. et al., ChemMedChem, 11, 217-233(2016).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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