ファルマシア
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難治性メニエール病におけるステロイド鼓室内注入の有用性評価
内海 俊一
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2017 年 53 巻 8 号 p. 825

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抄録

難聴・耳鳴り・耳閉感などの聴覚症状を伴うめまいを特徴とするメニエール病は,内リンパ液の過剰状態を本態とする.メニエール病の治療には,めまいの予防や症状改善を目的とした薬物療法が行われるが,コントロール不十分な難治例に対しては,手技の簡便さや治療効果などから,ゲンタマイシンの鼓室内注入が行われている.鼓室内注入とは鼓膜に注射針を刺し,鼓膜内(鼓室内)に薬剤を注入する方法である.しかしながら,ゲンタマイシンによるめまい抑制効果は,内耳前庭機能障害に起因するものであり,聴力低下のリスクが懸念される.
一方,ゲンタマイシンのような聴力低下を引き起こすことなく,めまい改善効果があることが報告されている副腎皮質ステロイドの鼓室内注入例も,近年増加傾向にある.これまでに,難治性メニエール病患者に対するゲンタマイシンや副腎皮質ステロイドの鼓室内注入の治療効果に関する報告はあるものの,両者の効果を比較したエビデンスレベルとして信頼性が高い報告はほとんどない.
本稿では,一側性メニエール病患者を対象に副腎皮質ステロイドおよびゲンタマイシン鼓室内注入の有効性について検討した無作為化二重盲検試験の結果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Sam G. et al., Int. J. Clin. Pharm., 38, 780–783(2016).
2) She W. et al., J. Laryngol. Otol., 129, 232–237(2015).
3) Pitesh P. et al., The Lancet, 388, 2753–2762(2016).
4) Goebel J. A., Otolaryngology Head and Neck Surg., 154, 403–404(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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