文化人類学
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特集 グローバリゼーションと公共空間の変容
タンザニアにおける路上商人の組合化とインフォーマル性の政治
抗争空間論再考
小川 さやか
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2017 年 82 巻 2 号 p. 182-201

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抄録

グローバリゼーションや都市の近代化と深く関連したジェントリフィケーションやゲーテッドコミュニティの出現、非-場所的な空間の拡大により、都市公共空間をめぐるアクター間の緊張関係が問われるようになった。これを受けて、路上商人問題を、国家や路上商人、市民社会のあいだで路上という資源をめぐり「働く権利」、「公平な労働のための権利」、「通行/運送の権利」、「移送/賃貸権」、「管理・運営権」など様々な権利の拮抗として位置づけ、路上商人による組合化とそれを通じた集合的行為に注目する研究が台頭している。本稿では、これらの研究が期待するインフォーマルセクターによる組織化とは、既存の都市公共空間の管理運営に迎合的なかたちにインフォーマルセクターの経済実践を埋め込むことを目指すものであることを指摘し、タンザニアの路上商人マチンガによる組合形成の過程および組合運営の特徴を、現実の路上空間とパラレルに存在する「イ フォーマルな政治空間」の拡大としてみる視点を提示することで、路上商人が都市公共空間を管理・統制する国家と取り結び始めた新たな関係をめぐる先行研究の議論を再考する。

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2017 日本文化人類学会
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