日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-32
会議情報

ポスター発表
Adamtsl2遺伝子に変異を持つマウスは精巣下降遅延とファーストウェーブ期の精子形成異常を引き起こす
*岩永 有可立石 晃司辻 岳人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】Adamtsl2(ADAMTS like 2)は細胞外マトリックスを構成する因子の遺伝子であり骨格形成における重要性は知られているが,雌雄生殖機能への関連は報告されていない。これまでに我々は体躯の矮小化や,雄性不妊を呈するミュータントマウスにおいて,Adamtsl2遺伝子における突然変異が原因であることを明らかにした。本研究ではこのミュータントマウスの生殖器官および精子形成過程について解析し,Adamtsl2遺伝子の雄性生殖機能への影響を明らかにした。【方法】Adamtsl2遺伝子の突然変異のホモ型個体およびヘテロ型もしくは野生型個体について,5週齢および10週齢の精巣,精巣上体,精嚢腺の重量を比較した。さらに,精子形成過程への影響を組織学的に調べるために,3週齢と5週齢の野生型および変異ホモ型の雄個体を開腹し,精巣の下降位置を確認後,精巣を採取しHE染色による形態の観察およびTUNEL法を行った。【結果・考察】5週齢および10週齢における精嚢腺,精巣上体,精巣重量は,変異ホモ型個体で明らかに小さく,特に5週齢ではその差がより顕著で半分以下の重量であった。また,3週齢では野生型,変異ホモ型個体ともに鼠径部に精巣が確認された。一方,5週齢の野生型個体における精巣は両側ともに陰嚢部に確認され,変異ホモ型個体では鼠径部に位置することが確認された。精巣の組織学解析より,3週齢と5週齢変異ホモ型個体において精細管内腔へ脱落した多核の円形精子細胞やエオジン濃染の精母細胞が高頻度に出現していることが確認された。また,精上皮内の空胞化や生殖細胞の乱れた層状構造も確認された。ほとんどのエオジン濃染の精母細胞についてはTUNEL陽性でありアポトーシスを生じていた。以上の結果から,Adamtsl2遺伝子が鼠径部から陰嚢部への精巣下降や精母細胞の減数分裂を正常に進行するために新たな重要因子であることが示唆された。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top