日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-99
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ポスター発表
マウスIG-DMRの母方アレルにおけるインプリント制御領域のスクリーニング
*原 聡史村松 あかり寺尾 美穂高田 修治
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抄録

【背景・目的】Dlk1-Dio3領域は,IG-DMRと呼ばれる領域の父母アレル特異的なDNAメチル化により制御されるインプリント遺伝子クラスターである。過去に報告されたIG-DMRを約4 kb欠損したマウスは,欠損を父由来で遺伝しても表現型を示さない一方,欠損を母由来で遺伝するとインプリント遺伝子の発現異常により周産期致死となる。このことから,IG-DMRは母方アレルにおいて特に重要な機能を持つと考えられているが,その分子機構は不明である。そこで本研究では,IG-DMRによるインプリント遺伝子発現制御の全容解明を目的として,過去の報告で欠損させた領域に周産期致死となる責任配列が存在するという仮説のもと,ゲノム編集を用いてその配列を同定することを試みた。【方法】過去の報告で欠損した4 kb内部にsgRNAを5箇所(a-e)設計し,それぞれの領域を欠失させたマウスを作出した。次いで,それらの欠失アレルを父由来あるいは母由来で遺伝させた場合の表現型およびインプリント遺伝子の発現を解析した。【結果】はじめに4.1 kbの領域をDlk1側(a-c)とGtl2側(c-e)に二分し,それぞれを欠失したアレル(Δa-cおよびΔc-e)を作出し,母由来で欠失アレルを遺伝したマウスの表現型を解析した。その結果,Δc-eを母由来で遺伝した胚はインプリント遺伝子の発現異常を伴い,胎生致死を示した。次いで,c-e領域をさらに二分した欠失アレル(Δc-dおよびΔd-e)を作出し,母由来でそれぞれの欠失を遺伝したマウスの表現型を観察したが,いずれも胎生致死を示さなかった。しかし,Δc-dの母方欠失マウスにおいて,母方アレルより発現する遺伝子の発現が有意に減少した。以上のことから,c-e領域の内部にインプリント制御に関与する領域が複数存在し,それらを同時に欠如した場合に致死を引き起こすことが示唆された。今後,DNAメチル化異常の生じるステージについて詳細な解析を行っていく。

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