日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-87
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ポスター発表
ブタ胚への複数gRNA共導入によるゲノム編集効率向上の検討
*小賀坂 祐平山下 司朗千代 豊
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抄録

【目的】胚にCRISPR/Cas9を導入することで標的遺伝子に変異を導入し,遺伝子ノックアウト(KO)ブタを作出する手法が報告されている。本手法における導入変異にはフレームシフトを伴わない挿入欠失や塩基置換も含まれるため,必ずしもKO変異とはならず,KO個体の安定生産において1つの課題となっている。本研究では標的遺伝子の開始コドンや重要な機能を持つドメインを対象に複数のgRNAをブタ受精卵へ共導入することで,当該領域を欠失させ,効率的にKO変異誘導が可能か検証した。【方法】IVM・IVFにより得られたブタ1細胞期胚にエレクトロポレーションにてCas9タンパク質とsgRNA(1種,3種)を導入した。IVC6日目で得られた胚盤胞期胚を用いてgRNA認識領域をPCR増幅し,Guide-it Genotype Confirmation Kit(Takara),MultiNA電気泳動装置(Shimazu)またはサブクローニングシーケンス解析により導入変異の有無とその塩基配列を調べた。【結果】標的遺伝子の開始コドン周辺(gRNA1,2,3)および重要な機能を持つドメイン周辺(gRNA4,5,6)に計6種類のgRNAを設計した。上記gRNAをそれぞれ単体で胚に導入した結果,全アリルに変異が導入された胚の割合(全アリル変異導入率)は0~36.4%であった。次に,上記gRNAを3種ずつ(gRNA1,2,3区,gRNA4,5,6区)共導入した胚における全アリル変異導入率を調べた結果,gRNA1,2,3区で67.9%,gRNA4,5,6区で74.4%であった。また,各区の全アリル変異導入胚5個において導入変異の塩基配列を調べた結果,gRNA1,2,3区では2/5胚で開始コドンの欠失,gRNA4,5,6区では5/5で標的ドメインを含む領域の欠失が観察され,複数gRNA共導入により遺伝子の発現・機能に関わる領域を欠損させ,効率的にKO変異が誘導できることが示唆された。

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