日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-65
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ポスター発表
妊娠ウシ子宮頸管におけるISGs発現誘導へのIFNTの直接関与
*國井 宏樹窪 友瑛浅岡 那月嶋崎 知哉古山 敬祐木村 康二唄 花子川原 学高橋 昌志
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抄録

【目的】ウシの着床過程では,授精後18日前後をピークとして,胚の栄養外胚葉からインターフェロン・タウ(IFNT)が分泌される。IFNTは母体の子宮内膜に作用し,JAK-STAT経路を介してIFN誘導性遺伝子(ISGs)の発現を誘導する。我々はこれまでに,子宮外組織である子宮頸部粘膜組織(CMM)においても妊娠特異的なISGsの高発現を見出した。しかし,IFNTの存在が直接的に示されているのは子宮内のみであり,IFNTがCMMにおけるISGs発現にどのように関与するのかは不明である。そこで本研究では,CMMへのIFNT移行の有無,ならびにCMMにおけるISGsの発現機序を明らかにすることを目的とした。【方法】非妊娠(np)および妊娠(p)ホルスタイン種搾乳ウシ由来CMMを,AI実施後14日目(d14),18日目(d18)および25日目(d25)において低侵襲的に採取後,RNAおよびタンパク質を抽出した。IFNTの検出は,抗IFNT抗体を用いウェスタンブロッティング(WB)にて行った。加えて,np-, p-CMMと共培養したnp-ウシ末梢血白血球(PBL)におけるISG15発現を解析し,p-CMMのI型IFN活性を評価した。次に,定量PCRによりJAK-STAT経路関連因子の継時的な遺伝子発現動態を,またWBにより着床前におけるSTAT1活性化状態を評価した。【結果】p-d18のCMM由来タンパク質成分より,IFNTのバンドが検出された。加えて,CMM-PBL共培養実験では,np-d18のCMMと比較して,p-d18のCMMと共培養したPBLにおけるISG15発現が顕著に増加した。さらに,p-d18のCMMでは,STAT1, STAT2, IRF9発現および,JAK-STAT経路の活性化を示すリン酸化STAT1の発現が顕著に増加した。以上の結果から,子宮頸部における着床前特異的ISGs発現は,胚由来因子IFNTが子宮外へ移行し,JAK-STAT経路を活性化することにより誘導されることが明らかとなった。

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