日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-17
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ポスター発表
ウシ卵巣の穿刺刺激が卵巣内未成熟卵胞の発育に及ぼす影響
石川 真空庄司 宙希畠山 ひなの長谷川 昇司渥美 孝雄森本 素子横尾 正樹河村 和弘*小林 仁
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抄録

【目的】マウスやヒトでは卵巣の小断片化処理が,卵巣内の未成熟卵胞を活性化し,卵胞発育を促すことが報告されている。しかし,ウシ卵巣の小断片化培養では,未成熟卵胞の活性化を示す明確な遺伝子発現は認められなかった(日本畜産学会第126回大会)。そこで本研究では,小断片化培養後に調べる遺伝子を一部変更して発現解析を行うとともに,卵巣に穿刺刺激を与え,胞状卵胞数の推移をウシ生体を用いて経時的に調べた。【方法】実験Ⅰ:食肉処理場由来卵巣の表面を剥離し1 mm角に細切した後,気相液相界面培養(38.5℃,5% CO2)を行った。培養時間は,0,2,4,6時間としたが,一部のサンプルは,培養を継続し48時間まで培養を行った。サンプルの遺伝子発現定量解析をHippoシグナル関連遺伝子について行った。実験Ⅱ:黒毛和種経産牛4頭に,採卵針を用いて片側卵巣に50回穿刺刺激を与え(穿刺卵巣),もう一方の卵巣は無処理(対照卵巣)とした。穿刺刺激の前後での卵胞数の推移および穿刺処理卵巣と対照卵巣の比較を行った。【結果】試験Ⅰ:細胞増殖因子であるCCN2,Birc5,FGF1遺伝子は培養時間2時間で増加し,その後は減少する傾向がみられたものの有意な差は認められなかった。一方,細胞増殖の抑制に作用するSmad7遺伝子は,培養時間2時間で顕著な発現を示し,その後は徐々に減少した。試験Ⅱ:穿刺刺激後の卵巣では,2週間目から卵胞数が増加する傾向が穿刺処理卵巣と対照卵巣の両方にみられ,その後も両側の卵胞数に有意な差は認められなかった。両側を合計した小卵胞数および全卵胞数は2ヶ月後にピークを示した。平均全卵胞数では,穿刺刺激時と1ヶ月後および2ヶ月後に有意な差が認められた(p<0.05)。以上のことから,ウシ卵巣の穿刺刺激は,片側の穿刺刺激でも両側の未成熟卵胞の発育を促進する効果を有していることが確認された。また,ウシ卵巣の断片化培養では,抑制系のSmad7遺伝子の高発現が,細胞増殖因子の遺伝子発現に影響している可能性が考えられた。

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© 2020 日本繁殖生物学会
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