日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-17
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臨床・応用
組み換えオステオポンチンによる牛子宮内膜上皮成長因子濃度の正常化効果の検証
*佐藤 弘子KYAW Hay Mar栁川 洋二郎永野 昌志田上 貴祥片桐 成二
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抄録

【目的】牛の精漿には,腟への作用を介してリピートブリーダー牛や高泌乳牛にみられる子宮内膜での上皮成長因子(EGF)濃度異常を解消し,受胎性を回復させる作用がある。われわれは精漿に含まれるオステオポンチン(OPN)様タンパク質にこの活性が見られることを明らかにしてきた。そこで本研究ではOPNの遺伝子組み換えタンパク質を調製し,子宮内膜EGF濃度正常化に及ぼす効果を検討した。【方法】まず大腸菌を使用してOPNの組み換えタンパク質を調製した。次に,発情後3日目の子宮内膜EGF濃度が低下しているホルスタイン種経産リピートブリーダー牛計13頭にセレクトシンク法を用いて発情を誘起し,発情発見後4~12時間目にそれぞれ0(対照群:3頭),0.1および1 mg(各5頭)のOPNを含む10 mlのPBSを人工授精用シース管を用いて供試牛の腟円蓋付近に投与した。すべての供試牛で発情後3日目の子宮内膜EGF濃度を再び測定した。また,組み換えOPN溶液は4℃で保存し,調製から12日以内に投与した。【結果】対照群ではEGF濃度の回復は見られなかったが,オステオポンチンを投与した牛10頭中5頭で発情後3日目の子宮内膜EGF濃度が増加した。子宮内膜EGF濃度が正常化した牛のEGF濃度は6.7 ng/g組織重量であった。【考察】本研究の結果から,子宮内膜EGF濃度異常による乳牛の低受胎対策における組み換えOPNの有用性が示唆された。今回の試験では,組み換えOPNは調製後約2週間冷蔵保存されていたため活性が低下していた可能性がある。このため,保存方法を凍結乾燥に変更して組み換えOPNの効果を確認する試験を継続しているところである。

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