主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】牛の精漿には,腟への作用を介してリピートブリーダー牛や高泌乳牛にみられる子宮内膜での上皮成長因子(EGF)濃度異常を解消し,受胎性を回復させる作用がある。われわれは精漿に含まれるオステオポンチン(OPN)様タンパク質にこの活性が見られることを明らかにしてきた。そこで本研究ではOPNの遺伝子組み換えタンパク質を調製し,子宮内膜EGF濃度正常化に及ぼす効果を検討した。【方法】まず大腸菌を使用してOPNの組み換えタンパク質を調製した。次に,発情後3日目の子宮内膜EGF濃度が低下しているホルスタイン種経産リピートブリーダー牛計13頭にセレクトシンク法を用いて発情を誘起し,発情発見後4~12時間目にそれぞれ0(対照群:3頭),0.1および1 mg(各5頭)のOPNを含む10 mlのPBSを人工授精用シース管を用いて供試牛の腟円蓋付近に投与した。すべての供試牛で発情後3日目の子宮内膜EGF濃度を再び測定した。また,組み換えOPN溶液は4℃で保存し,調製から12日以内に投与した。【結果】対照群ではEGF濃度の回復は見られなかったが,オステオポンチンを投与した牛10頭中5頭で発情後3日目の子宮内膜EGF濃度が増加した。子宮内膜EGF濃度が正常化した牛のEGF濃度は6.7 ng/g組織重量であった。【考察】本研究の結果から,子宮内膜EGF濃度異常による乳牛の低受胎対策における組み換えOPNの有用性が示唆された。今回の試験では,組み換えOPNは調製後約2週間冷蔵保存されていたため活性が低下していた可能性がある。このため,保存方法を凍結乾燥に変更して組み換えOPNの効果を確認する試験を継続しているところである。